26.極・精霊使いの力、サイクロプスを圧倒する
「どうしますか? もう少し進みますか?」
「ああ。記憶違いかもしれないしな」
そうして更なるダンジョンの奥部に突き進む僕たち。
しばらく進むと、これまで見たことがない巨大なモンスターが現れた。
巨大なこん棒を持つ一つ目の敵だ。
とりあえず僕は、いつものように『ユニットデータ閲覧』を放つ。
――――――――――
【コード】ユニットデータ閲覧
名称:ダンジョン・サイクロプス(LV56)
HP:963/963
MP:142/142
属性:耐性→物
▲基本情報▼
――――――――――
な、何これ……?
僕は目を疑った。
バグ・モンスターではないが、これまでの敵とはステータスが格違いだ。
これまでのように盾役の冒険者が、サイクロプスの前に立ちふさがる。
『プロパゲーション!』
まるで流れ作業のように。
所詮はFランクダンジョンだという油断があったのかもしれない。
「やばい相手です! 気を付けてください!」
「へ? いきなり何だ!?」
サイクロプスは巨大なこん棒を振りかぶって、冒険者に向かって振り下ろした。
盾役の冒険者はいつものように受け止めようとしたが、押さえきれずに壁に叩きつけられる。
「『アイテム所持数の増減――エクスポーション!』 ロレーヌさん、これを使ってあげて下さい!」
「は、エクスポーション!? そんなもの、いったいどこから!?」
「疑問は後です。僕はあいつをどうにかします!」
「単独であれに挑むつもりか!? 自殺行為だ、アレス!!」
このままではパーティ全体に大きな被害が出る。
ロレーヌさんが悲鳴のような声を上げたが、僕は無我夢中だった。
サイクロプスは冒険者にとどめを刺そうと、こん棒を振り上げた。
急な事態に誰も動けない。
僕はアイテムをロレーヌさんに押しつけ、
頼るのは『極・神剣使い』のスキルだ。
ダンジョン内の敵を相手に振るうことで、スキルレベルは6に到達していた。
『虚空・裂斬!』
飛び上がって剣を振るう。
その一撃は、こん棒を持つサイクロプスの腕をスパっと切り落とした。
ギャアアアアアア!
ダンジョン内にサイクロプスの絶叫が響き渡る。
――――――――――
名称:ダンジョン・サイクロプス(LV56)
HP:921/963
――――――――――
じょぼじょぼっと音を立てて、サイクロプスの腕が生えてくる。
大して効いていない――やっぱり物理耐性が厄介だ。
出来る限り威力が高い属性攻撃をぶつけたい――かといって、このダンジョンの中で、ビッグバンやブラックホールを撃つのは、壁が崩れ落ちる可能性がある。
「あ、アレス。私の攻撃なら効くと思う?」
「試すにはあまりに危険だよ。ティアは下がってて?」
不満そうな顔をしつつも、ティアは僕の後ろに下がった。
相手はレベルが56もある化け物だ。
下手すると1撃が致命傷になりかねない。
僕は打開策を練る。
何も僕が使えるのは「極・神剣使い」だけではない。
攻撃が効かないなら、戦い方を柔軟に変えるべきだ。
――――――――――
【コード】スキル付け替え
※選択可能なスキルは以下の通りです。
→ 極・神剣使い(SKLV6)
→ 極・精霊使い(SKLV1)※装備中
→ 極・装備技師(SKLV2)
→ ???(
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――――――――――
【極・精霊使い】
SKLV1:中位精霊までを自由に召喚可能
――――――――――
精霊使い――それは契約した精霊を使役して戦わせるスキルである。
僕は『極・精霊使い』を選択し、自らに装着した。
15歳で授かる将来を左右するスキルすら、今の僕ならワンポチで付け替えられるのだ。
ギロリ。
横槍を入れられたサイクロプスが、怒りに満ちた目で僕を睨みつけた。
ぶっつけ本番だが、やるしかない。
「顕現せよ――『イフリート!』」
僕が選択したのは中位の炎属性の精霊。
極・スキルともなれば、最初から契約している精霊も、また強力だった。
僕の声に答えて現れたのは、全身炎に包まれた炎の魔人。
咆哮を上げてひとにらみするだけで、サイクロプスは怯えたように後ずさった。
それから怯えたことを恥じるように、イフリートに向かって挑みかかったが――
ガシッ!
イフリートは振り下ろされたこん棒を鷲掴みにした。
そのままサイクロプスに向かって、巨大な拳を叩きつける。
バッコーン!
それだけでサイクロプスは壁に向かって吹き飛ばされる。
そうしてそのまま、光の粒子となって消え去った。
あまりに圧倒的だった。
「ねえ、アレス。また訳の分からないことを……。何なのよ、それ?」
あまりに一方的な戦いを前に、ティアが呆然と僕を見ていた。
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