25.はじめてのダンジョン探索
ロレーヌさんのパーティは、彼女をリーダーとする3人組のBランクのパーティだ。
リーダーのロレーヌは、槍を自在に操るベテランの冒険者である。
彼女を補佐するように大盾を構えた大男と、支援役の魔術師が息のあったコンビネーションで敵を仕留めていた。
僕たちはロレーヌさんに連れられて、洞窟の前にやってきた。
通称『コウモリの洞窟』と呼ばれているFランクのダンジョンのようだ。
「Fランクダンジョンなんて、アレスさんにとっては簡単すぎないか?」
「いえ、ダンジョンに潜るのも初めてですから。ロレーヌさんたちが付いてきて下さって、本当に心強いです」
ダンジョンとは、洞窟や森など自然の地形の一部が変化して生じるモンスターの住処のことだ。
生息するモンスターの危険度に応じて、S~Fランクにカテゴライズされる。
放っておくとダンジョンでモンスターが異常発生して、近くの街を襲うこともあるため、定期的にモンスターを駆除する必要があるのだ。
「安くはない授業料を払ってもらっているんだ。この間の恩返しも兼ねて、精いっぱい力にならせてもらおう」
「この間のことは、本当にたまたまですから。あまり気にしないで下さいね?」
ロレーヌさんたちは、自分が挑むはずだったカオス・スパイダーを代わりに倒した僕たちに、深く感謝しているようだった。
義理堅い性格なのだろう。
「たとえ格下のダンジョンでも、油断すれば死を招く。最大限の警戒をしてくれ」
「「「分かりました!」」」
ロレーヌさんのかけ声と共に、僕たちは初めてのダンジョンに足を踏み入れる。
◆◇◆◇◆
「初めて見つけたモンスターは、とにかく防御を固めて様子をうかがうんだ」
先行するロレーヌさんたちが、モンスターを見つけたようだ。
飛び回るコウモリ型のモンスター。
『プロパゲーション!』
ロレーヌさんのパーティの中でも盾を持った大男が、モンスターの前に飛び出し敵のターゲットを自身に向ける技を使った。
「アレスさんたちも盾役が1人居ると良さそうだな。こうやって攻撃を受け流しながら、相手の癖を見つければ、おのずと対応手も分かるようになる」
初めて見るモンスターと会ったときは、とにかく油断せず慎重に。
ダメだと思ったら迷わず逃げるのも長生きする秘訣だと、ロレーヌさんは続けた。
「すいません。僕、鑑定スキルが使えるんですけど、使っても大丈夫ですか?」
「は? アレスさんは前衛だろう? 鑑定スキルが使えるなら話が早いが……」
『ユニットデータ閲覧!』
――――――――――
【コード】ユニットデータ閲覧
名称:ダンジョンバット(LV6)
HP:63/63
MP:4/4
属性:弱→氷
▲基本情報▼
――――――――――
「ええっと。レベル6のダンジョンバットみたいです。氷が弱点なので、ティアの氷魔法で撃ち落とせると思います。ティア、お願いして良い?」
「任せて! 『アイシクル・シュート』」
ティアが魔法で、氷の氷柱を発射する。
それは狙い違わずモンスターに命中し、敵を光の粒子に変えていった。
「驚いた。アレスさんは、そんな便利なスキルも持っていたのだな」
「ありがとうございます」
それから僕たちは、順調にダンジョンを進んでいった。
「『裂空・破斬』!』
「『氷華!』」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! 頑張って~!」
現れるモンスターは、まずは僕が素早く解析してメンバーに共有。
スキルを成長させたいというのが、当初の目的だった。
僕も『極・神剣使い』のスキルを積極的に使っており、気づけばスキルレベルは6まで上がっていた。
――――――――――
【極・神剣使い】
SKLV1:剣士/剣聖のスキルを使用可能
SKLV3:剣装備時のATKが20%アップ
SKLV5:剣装備時のSPDが20%アップ
SKLV6:虚空スキルを使用可能
SKLV10:???
――――――――――
剣を振るえば振るうほど、体が軽くなっていく。
スキルの効果で、ステータスが上がっているのだろう。
さらにはスキルレベルが上がり、剣の型が頭の中に流れ込んできた。
もうじき最深部といったところで。
先導していたロレーヌさんが突如として立ち止まり、困惑したような表情を浮かべる。
「む? おかしいな。昔、来たときは、ここが最深部だったのだが……」
「どういうことですか?」
「昔来たときは、ここにボス部屋があったはずなのだが……。どこにも見当たらないんだ」
「ダンジョンって、そんなに地形が頻繁に変わるんですか?」
「あり得なくはないが、ここはFランクダンジョンだしな。ましてボス部屋の位置が変わるなんて、聞いたこともないぞ――?」
考え込むロレーヌさん。
どうやらダンジョンは、まだまだ続いているようだ。
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