第13話 天は悪魔に微笑んでしまったようです
普段であればいくら勇者であるロイの力でも同じく勇者であり身体能力が近いレベルの2人が力を合わせれば手を振り払って逃げ出すことなどそこまで難しい事ではなかった。
しかしクレアのあまりに常軌を逸した発言の数々によって彼らは目覚めたばかりにも関わらずノックダウン寸前まで追い込まれており、新しい顔を貰わなければ闘えないア◯パンマン並みに著しく抵抗する力が低下していた。
それでも何とか死神の手から逃れようと2人は足掻く。文字通り自身の安否がかかっているため、双方共に全く譲る気配が見えない。
「ええい!こんな状況下で俺だけ置いて行なんて人としての心を持っていないんか!」
「そう言う兄さんこそこんな混沌空間に弟や仲間を留まらせようなんて人としての思いやりを持っていないのかい?」
「そうです!たまにはチームのリーダーらしくパーティーメンバーの為に身を呈しようとは思わないのですか」
「なにがリーダーらしくや!普段全く敬ったりリーダー扱いしとらんくせにこんな時だけ持ち上げるなや!」
「そもそも兄さんが余計な事を言わなければあんか悪夢を思い出さずにすんだんだ。責任を取って兄さんがこの事態の収拾を図るのが筋というものですよ」
「それに元とはいえパーティーメンバーの悩みを解決するのはリーダーの役目です」
「どうせウチが言わんでもさっきみたいにクレアに無理矢理残らされて話しているうちに嫌でも思い出したやろ。それにパーティーメンバーの悩みを解決するのがリーダーの務めならそれの解決の為に力になるのがの副リダーや司令塔であるお前らの務めでもあるやろ!」
「いつも仕事を任せっきりなどころか
「そうだよ!僕達がこれまでどれだけ兄さんの起こした問題に頭をさげて謝罪してきたと思っているんですか!名誉挽回の為にも今回の件は兄さんがこれまでの責任を取る意味でも1人で解決に導くべきだ!」
「こんなん1人で解決するとか無理に決まっとるやろ!うだうだ言ってないで力貸さんかい!」
「お前たち何を争っているのだ。私を見習ってもっと毅然と行動出来ないのか?」
「今はまともにつっこむ余裕もないんや!元凶はだっまとれ!」
(もしここで1人取り残されようものなら…)
((もしここから出られなければ…))
(((精神的に死は免れない!!)))
3人は自分たちが生き残る道を確保すべく死力を尽くすのだった。しかしその対決はクレアよってあっけなく幕を下された。
「私の話はまだ終わっていないと言っただろう?いつまでも遊んでないでさっさと座って聞いてくれ」
ロベルトとセルレアはクレアに力づくで掴まれて引きずられながらソファーへと引き戻された。
(何故ですか神様!僕らは兄さんとは比べ物にならないくらい日頃の行いは良いはずなのになんでこんな仕打ちをうけるのですか!)
(天罰を下すべき相手が違います!私等などに裁きを与える前にあの
心の中で嘆くものの救いの手は差し伸べられず、代わりにソファーに座った後で2人の肩にロイが手を回してきた。
「さあこれで一連托生やな。2人も仲間としてクレアの悩みの解決に仲良く尽力しようや。なあ」
とても楽しそうにロベルトとセルレアに語りかけるロイとは対照的に2人の気持ちは沈んでいった。
「僕…もうお家に帰りたい…」
「ロベルト…残念ながらここ…ホームです」
側から見たら3人の様子は薄ら笑いを浮かべた死神とその死神に魂を抜かれて生気を失っている人間にしかみえなかった。
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