二刀流はロマンだが所詮はロマン

 KAC2022で書いた話です

 ヘッドマウントディスプレイでプレイするタイプのゲームなので、操作がかなりムズイ、という設定


 アルフィア=アユ

 スプリグ=ファルキン

 ―――――



「二刀流ってロマンだよな」

「いきなり、なに?」


 ゲームプレイの合間、現実で休憩をしているところで春樹があゆなにそう話しかけた。


「別々の武器を使って戦うって良いよねって話」

「だから?」

「出来ればでいいので、二刀流用の武器を作ってください。お願いします」


 春樹のお願いにあゆなは嫌そうな表情をしていたが、いくらか春樹が交渉することでその武器を作ることになったのだった。




「これ、デフェルガの短剣とリルケルフィスト」

「おお、あざす! 注文通りだ……な? あれ、Bラン?」


 春樹、もといこのゲーム内でのネームであるスプリグは注文通りの武器を受け取り満面の笑みを浮かべていたが、あることに気付いて疑問の表情を浮かべた。


 Bランというのはこのゲームでの品質を表す基準である。最低がFで最高がS+になる。Bランクは中間よりも上に位置してはいるが、トップクラスのプレイヤーにとっては物足りない品質である。


「アルフィアさんや。普段だったらAランとか余裕で作っているのにどうしてBランなん? いや、不満とかではなく純粋な疑問として」

「ちゃんと使えるかどうかわからないからお試し用。素材をケチったからそのランクになった」

「あー、まあそうな。俺が使えるかどうかわからないから保険を打った訳ね。確かに今までやったこと無かったから出来るかどうかわからないな」



試し切りのためにギルドホームの訓練場に向かったところでスプリグが首を傾げながら周囲を見渡した。


「ん? いつもの試し切り人形が無いけど、どうするつもりなんだ?」

「私が相手をする」

「え? マジで?」

「うん」


 突然の展開にスプリグが戸惑っている間、アルフィアはアイテムボックスから2つ武器を取り出した。


「アルフィアさん、それは?」

「私の武器。重金のメイスとディベルビーのレイピア」

「何か俺の武器よりも良さげに見えるのですが……」

「……気のせい」


 スプリグの問いにアルフィアは視線を逸らしながらそう答えた。それを見てスプリグが少し納得できない、そういった表情を浮かべている中、2人は練習場の真中へ移動した。




「結構むずいな。上手くいかないわ」


 暫く二刀流の練習をしていたところでスプリグがそう呟く。


「この二刀流スタイルを上手く使うには武器同士のコンボではなく、連係させる感じを意識した方が良い」

「どっちも同じでは。あ、ちょっとやめっ」


 たどたどしいとまでは行かないが、スプリグはまだ覚束ない感じで武器を振るう。


「違う。コンボはどちらかというと双剣なんかの連続技をこと。連係は技と技の繋がり。そこが違う」

「あ、はい」

「ともかく、なるべく技は使わない。二刀流をするのであれば、あれは単純に隙を作るだけの物。まあ、使い方しだいでは使っても問題はないけど、慣れない内は使わない方が良い」

「ウィ。って言うか、説明聞きながら攻撃捌くのきついんですけど!?」

「これも訓練」


 スプリグはアルフィアの攻撃をギリギリのところで捌き続けている。


「というかアルフィアさん! 妙にその二刀流に慣れているようにお見受けしますが、貴方、私と同じく二刀流、やったこと無かったですよねぇ!?」

「うん」

「それでこの扱い……あーた、まさか事前に練習してやがりましたわね!」

「何故おねぇ口調?」


 いきなりスプリグの口調が変わった事に驚いているアルフィアだったが、その間にあった攻撃を難なく捌き続けていた。



「当てられないんだが、くそ。こうなれば【グランドスラッシュ】!」


 アルフィアに一切攻撃が当たらないことに痺れを切らせたのか、スプリグが短剣の大技を繰り出す。


「【カウンターピアース】」


 しかし、アルフィアはその技に合わせてカウンター技を繰り出した。


「げっ!?」

「これで【ピンポイントインパクト】」

「うがっ!」


 カウンターで技を消された上、その後にメイスによる技を受けたスプリグはその衝撃で引き飛ばされていった。



 訓練場であるたったため、すぐにスプリグは起き上がるとこう言った。


「何つーか、たぶん俺、二刀流向いてないわ」

「私もそう思う」


 それを聞いたアルフィアは大きく頷いた。


 こうして春樹のロマンは終わりを迎えることになったのだった。


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