第8話 幻視毒・人工血液

  

『【錬金】の基礎レシピを獲得しました』

『【料理】の基礎レシピを獲得しました』

『【裁縫】の基礎レシピを獲得しました』

『【鍛冶】の基礎レシピを獲得しました』

『【細工】の基礎レシピを獲得しました』

『【木工】の基礎レシピを獲得しました』


 よし、これでギルド書庫に来た目的は達成した。


 一気に7種類の生産スキルのレシピを呼んだわけだけど、【調合】だけは何も覚えなかった。そう言えば最初の頃、熟練度が5%になった際に何故かレシピを覚えたことを思い出した。どうやらあれが基礎レシピそのものだったらしい。


 どうしてあの段階で覚えたのかはわからないけど、今思うと救済措置か何かだったのかもしれない。あれが無かったら私がゴフテスに勝つまで時間が掛かっただろうし、あの犬に勝つのももっと大変だっただろうからね。


 まあ、その辺りは私が考えたところでわかる訳がないので、読み終わったレシピ本は本棚にしまってこよう。



 さて、それじゃあ、閉架書庫にあった本を読んで行こう。最初は薄い奴からでいいかな。パパっと読めるしね。


 えっと、1冊目は幻視毒について……か。1冊目から毒かぁ。

 あれ? 幻視ってどこかで見たような、聞いたような気が……? まあ、読み進めて行けばわかるかな。あ、イラスト付きだ。文字だけの本よりもちょっとワクワクするね。これ毒についての本だけど。


『幻視毒の精製方法

 幻視毒は複数の毒性を持った素材を合成することで作り出すことが出来る錬金毒。使用する素材はミリナイの根・ミリナイの幻惑葉・マッヒン茸の3種。分量はミリナイの根が2・他は1で合成する。合成する際は慎重に、他の錬金薬とは違い合成の際の魔力の管理が重要』


 ミリナイって1回目のイベントのガチャチケから出て来たアクセサリーのやつ? ああ、そうかあれで幻視って言葉を見たんだった。でもあれって確か幻視耐性がついたアクセサリーだった記憶があるのだけど。


 うーん。これは薬も過ぎれば毒となる、とかそういった物なのかな。それとも花の部分と他の部分で含んでいる成分が違うとかそういう?


 よくわからないけど、本を読み進めてみる。しかし、この本にはこのレシピしか記載されていないようだ。


『幻視毒のレシピを獲得しました』


 本を閉じたことでレシピを覚えた。

 しかし、幻視の解毒剤とかのレシピはない感じなのだろうか。研究するなら解毒剤の方も一緒にすると思うのだけど、そっちはもしかして【調合】側ってことはないよね? さすがにそれは無い……はず。


 次の本は……人工血液の作り方。こっちもイラスト付き。うん、その所為で全体的に赤っぽいね。


 しかし、ここに来て人工血液とは。と言うか、本来ならここでレシピを覚えるのか。すでに作れはするけれどこれは正式なレシピだし、もしかしたら今使っているやつよりも良い感じの物が出来るかもしれない。


『人工血液の作り方

 状態異常:貧血、を解消するために必要なアイテム。またはある魔術で使用することが出来る。

 作製する際に使用するアイテムは、動物の血液Qu:B以上3つ、または魔獣の血液Qu:B以上2つ、浄薬草2つ、魔石(小)5つ。

 注意すべき点は、全てを一度に合成しようとすれば確実に失敗することである。まず先に使用する血液を浄薬草と合成する。これにより血液中に含まれる雑多な魔力を排除し、次に魔石(小)と合成する際の反発を減らすことが出来る。

 いくつか仮説を立ててみたが、おそらくこれ以外でも人工血液を作ることは可能だと思われる。しかし、現段階では仮説の域を出ていない状態だ』


 あー、そう言う事か。私が作っていた方はここで書かれている仮説の方だったと。と言うか、地味に作製難易度が高くないかな。素材系の血液なんて今まで見たこと無いし、どうやって手に入れるかもわからない。しかもQu:B以上とか。委託でも未だにQu:Bが流れていること自体あまりないのに。


 あと、新しい状態異常が出てきた。でも貧血って状態異常WIKIに載っていたっけ?

 

 WIKIもあまり確認する訳じゃないからあったかどうかの記憶は曖昧だ。少なくとも私は見たことも聞いたこともない。


 それに貧血って言う以上、たぶんドレイン系の攻撃をして来るエネミーが居るってことだよね? UWWOでは腕や脚に強い攻撃を受けた際に部分麻痺という状態異常にはなるけれど、欠損という状態異常はない。だから欠損による流血で貧血になるという流れはないはずだ。


 あ、そう言えば【血魔術】にドレイン系のスキルがあったような。あれを使えば血液系の素材は手に入るかもしれない。


 そう思いながら本を閉じる。


『人工血液のレシピが追加されました』


 さっきと文言が違う。これって別の作り方のレシピをもう覚えているからかな。レシピ、上書きとかじゃなくてよかったけど、もしかして作るたびに一々どちらのレシピで作るとかの選択が出たりする感じ? 毎回選択するの面倒だから、どちらかで固定してもらえるとありがたいけど、一回確認しないとわからないか。


 さてさて、最後の本だ。この本の厚さは、本棚に入っているレシピ本と同じくらい。

 内容は……ん? かなり普通だ。さっき読んだ本棚のレシピ本とそう変わらない感じ。もしかしてこれって2次スキル持ち用のレシピ本なのかな。


 とりあえず読み進めて、あ。幻視の状態異常用の解毒薬がある。なるほど、解毒関係は通常のレシピ扱いという事か。


 これも最後までしっかり読んで閉じる。


『【錬金】の基礎レシピ2を獲得しました』


 基礎レシピ2ってことは通常のレシピってことか。ナンバリングがついているってことは3とか4もありそうな気配。他の生産スキルもそうなのかな?


 これで【錬金】のレシピが沢山増えた。中には作らなそうなアイテムもあるけれど、これはこれで嬉しいね。


 これで全部読み終わったね。他に読みたい本も思い浮かばないし、閉架書庫から取り出して貰った本を返却して、今覚えたレシピでも作ってみることにしよう。



「これ読み終わった……ので返却を」

「あ、はい。読み終わったのですね。3冊。全て受け取りました」


 カウンターに借りた3冊を置くと司書の男性がそれを笑顔で受け取ってくれた。


 じゃあ、これで用も済んだし生産施設の方へ戻ろう。


「おや? アユさん」

「うぃ?」


 カウンターの前から移動しようとしたところで司書の男性か声を掛けられる。少し体を捻っている状態だったため変な声が出てしまったことが少し恥ずかしい。

 しかし、何故呼び止められたのか。というかこの司書、呼び止め過ぎでは?


「アユさんって、ご自分の本、お持ちだったのですね」


 そう言われて、その本が何を指すのか少しだけ時間が掛かった。


 自分の本? ……あ、そう言えば最初の頃に初期地点で読めない本、というか日記らしきものを拾ったね。殆どインベントリの肥やしになっていたから忘れていたけど。


「その本、ちょっとお見せいただいてもよろしいでしょうか」


 そう言う司書の目が何かを狙うような怪しい光を……蓄えている訳もなく、普通に笑顔で私の顔を伺っていた。



_____


・幻視毒の精製方法を読む条件は、状態異常:幻視について知っている。またはミリナイについて知っている。のどちらかを満たすことです。

・人工血液の作り方は、人工血液・魔造血液の情報を持っている。または貧血・出血の状態異常を知っている事です。

 貧血・出血ともにWIKIに記載されています。状態異常としてはマイナーなので知名度は低いです。


・この司書は中位AIになります。

基本的に受け答えは複数の中で固定。ただし条件を満たすと特殊な受け答えをするAIになります。そのため、会話が不自然に変わることがあるのです。

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