第2章 素材を求めて、右往左往
第2章 プロローグ 前
※加筆・修正しました
「そろそろオルグリッチが居た場所に着くな」
「そうだな」
イベントも終わり、その後のメンテナンスが終わってからログインし、俺たちは急いで第2エリアを目指して荒れた道を進んでいた。
まあ、今まで何度も通っているから道の粗さに慣れている。問題は途中にエネミーが飛び出してきたり、PKが出て来たりすることだが、さすがにそう言ったものは早々出る物ではないな。
順調に道を進んで行く。急いでいる理由はリアルの事情だ。ぎーんとジュラルミーんが午後から予定があるらしく、それまでに第2エリアでリスポーン地点の更新を行いたい。
2人は先に行けと言っていたが、さすがに置いて行くのはパーティーとして駄目だとエンカッセが2人を言い包め一緒に行くことになった。
アユに聞いた通りであれば、このまま順調にいけば昼前にはセントリウスに着くはずだ。
そうして、俺たちはオルグリッチが居るエリア前に到着した。そして、俺たちの前には知らないプレイヤーが4人、道を塞ぐように立っている。
「何か用か? 俺たちは急いでいるんだが」
俺たちを通すつもりが無いのか、避けようとするとそれに合わせて動いて来た。さすがにここで時間を使いたくはない。それは他のメンバーも同じだったようだ。
「エンカッセパーティーだよな?」
「そうだが。上にあるPN見ればわかるだろう?」
「……ちっ」
そいつらは何が気に食わないのか、舌打ちするだけでそれ以上何を言うこともなく俺たちを睨んでくる。
「用が無いなら、どいてくれ。俺たちはこの先に行きたいんだ」
「用ならある」
「じゃあなんだ」
「……俺らも一緒に連れていけ」
「は?」
明らかに人に頼みごとをするような態度ではない。いや、それ以前に一緒に連れていけってどう言うことだ? こっちはフルパーティーで、他のヤツを入れるような余裕はないんだが。
「どう言う意味だ?」
「ここのBOSSを倒すのを手伝え。そうすればどいてやる」
どうして俺たちが手伝わなければならないのか理解できないが、要はそれを言うためにここで待っていたと言うことか? いつ来るかわからないのによくやるな。
「何故、そんなことをしなければならない。それに急いでいる以上、そんなことをしている時間もないしな」
「うるせぇ。てめぇらだけ先に行くのは納得できねぇんだよ!」
「呆れたー。自分たちじゃ出来ないからって他の人の力を使おうとするとかー。他力本願過ぎるってぇ。しかも、拒否したら妨害するとか、自分勝手すぎじゃーん」
「うるせぇよ!」
ジュラルミーんの言葉が頭に来たのか、目の前に居る奴らが突然武器を取り出した。いや、そもそも、オルグリッチが倒せないなら後2人仲間に入れればいいだろうに。
ん? 【感知】に何かが引っかかったな。あー、そう言うことか。
「奇襲、2人だ」
「む? 了解」
「気付いてるよーん」
元から俺らの足止めが目的だったのか。なら、BOSS攻略を手伝っても足を引っ張ったり、戦闘中に不意打ちをして来たりするつもりだったのかもな。
まあ、奇襲についてはこっちが気付いた時点であまり意味は無いだろうが。
しかし、何でこうもピンポイントで妨害されたんだ?
いくらワールドアナウンスで俺たちがここのエリアBOSSを討伐したことがバレていたとしても、こうも待ち構えられているとどこかから情報が惚れていたとしか思えない。
「このまま突っ切るぞ!」
「ああ!」
「えー、倒さないのー?」
「先に仕掛けて来たのはこいつらだが、レッドではないからな」
妨害プレイヤーを倒した場合、こちらがレッドNAMEにはならないことはいくつか情報が出ているのでおそらく大丈夫だろう。しかし、絶対に問題もないと言えるほどの情報でもないので、下手なことはしない方が良いんだろうな。
「あー、まぁそーかぁ」
ジュラルミーん、なんでそんなに落ち込むんだよ。って、ああ、そう言えばこいつ、寄生とか嫌いだったな。緩い外見とか普段の雰囲気の割に結構過激派で、PKとかも見ると絶対殺すマン…ウーマン?になるからな。まあ、レッドでなくても、周りに迷惑をかけるような奴を率先して排除するくらいには嫌っているな。
過去に何かあったのかもな。ってまあ、原因はおそらくあれだが。他のメンバーも大なり小なり同じ傾向はあるしな。
「とりあえず、パーティーリーダーである俺がBOSSエリアに入って戦闘しないを選択すれば、こいつらは追って来られないはずだ」
「そうだな」
BOSSエリアの特性上、同一バトルフィールドに複数のパーティーが入ることは出来ない。それにこいつらはオルグリッチを倒していないからBOSSをスキップ出来ないはずだしな。
「ふともも、援護」
「はいはい」
そうして俺らは妨害してくるプレイヤーを搔い潜り、BOSSエリアを抜けることに成功した。
BOSSエリアを抜け、セントリウスに近付いて来た辺りでプリネージャが、ふと思い出したようにつぶやいた。
「それにしても、どうして私たちがこの時間にあそこを通るとわかっていたのかしら」
「まあ、俺たちがオルグリッチを倒していたのは割と知られていたから、それで予想を建てたんだろう」
「メンテ終わってから速攻ログインしてずっとここで待っていたとかじゃないか? イベントの最初の位置からまだウエストリアに居ることはバレていただろうし」
「ないとは言えないな」
「もしくはあいつらの仲間に付けられていたとか」
「まっさかー。そこまでするぅ?」
少しでも楽をしようとか誰よりも先に進みたいとか、そんな感じの考えを持っているような奴らの中には手段を択ばない奴らもいるからな。絶対に無いとは断言は出来ない。
「他のゲームだってあっただろ。寄生して楽に進もうとする奴らとか、無言で後を付けて他のプレイヤーを露払い扱いする奴らとか。下手すると騎士しておいて最終的に手伝ってもらった相手をPKするとかもあったしな」
「このゲームって言うほど先駆者特権はないだろうに」
「他ゲーで染みついた感覚っていうのはそうそう取れないもんだよ」
「そういえばファルキンも気を付けろよ」
「え? 何を!?」
「掲示板の書き込み。イベントの後に少し怪しい書き込みしていただろ」
うわ。流れだったとはいえ、そう言えば装備の方の情報も出してしまっていた。ヤベェ。
でも、なんでだろうな。別に書き込もうとしている訳でもないのに勝手に書き込まれているんだよな。しかも投稿までセットで。もしかして思考入力の設定バクっているのか? まさかとは思うが、運営の方に質問をしておいた方が良いかもしれん。
いやまあ、もしバグであったとしても言い訳にしかならないか。
「口が軽いと本格的に嫌われるぞ? 前のことは終わったことだからどうにもならないとしても今回はもっと慎重にしないとな」
「ああ」
前のゲームの再現は勘弁だ。さすがにまだ大丈夫の範囲だと思うがこれ以上は駄目だな。もっと気を付けねば。というかミスっているのは掲示板だけだから、それから離れればいいんだよな。そうしよう。
「お!? 建物らしき物を発見」
「本当か?」
JOB:弓術師の特性で他のパーティーメンバーよりも視認できる範囲が広いぎーんが、セントリウスらしき場所を見つけたようだ。
時間的には、まあ予定の範囲内か。多少遅れてはいるけどそれは妨害にあったからだしな。
「後少しの距離ならもう少し飛ばすぞ」
「了解」
「うぇーい」
先ほどの妨害から若干機嫌が悪いジェラルミーんだけど、まあ、セントリウスに着けばおそらく治ると言うか忘れるだろうから、気にしなくてもいいよな? たまにだがいきなり爆発するから怖いんだよなこいつ。
そうなるよりも前に、セントリウスに着くと良いんだが。
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