第2章 プロローグ 後
セントリウスの検問に着いた。今まで居たウエストリアのように防壁で囲まれていない都市は新鮮だ。イスタットの方は行ったことが無いがサウリスタの方もウエストリア程ではないにしろ防壁があったからな。おそらくイスタットの方にも防壁はあるだろう。
それにしてもどうしてそうなったのかが気になるが攻略には関係ないだろうし、詳しく知るのは追々で良いだろう。
「おお、オルグリッチを倒したのか。これは今後が期待できるな。ギルドカードも問題なし。通っていいぞ」
「ありがとう」
「どもー」
全員のギルドカードを確認した検問員はチラッとカードを見ただけで、嬉しそうな表情で俺らを見送った。
「あれ、ちゃんと見ていたのかしら?」
「さすがに見ていないと言うことは無いだろう。ただ、通行許可が有るか無いかを確認しただけだから、あんな感じになったんだろう」
「それにオルグリッチを倒したことを理解していたから、見ていないはずはない」
「そーねー」
まあ、気にしたところでわかる訳はないな。それに通して貰えたのだからそれでいいんだし。
そうして俺たちはセントリウスの街中に入る事が出来た。
「ギルドよりも先にリスポーン地点の更新をする予定だが、それでいいか?」
「えーよー」
「むしろその方が良い」
エンカッセの問いに、この後離脱予定の2人が同意を示した。
「リスポーンポイントは…町の中心か。ウエストリアやサウリスタと同じなら噴水の所になるんだが」
「多分同じだろ?」
「別に形は何でもよくないか?」
心の中でふとももの発言に同意しかけたが、いや、同じ方がわかりやすくて良いよな? そう考え言葉を出すのを思い留める。
UWWO内の時間ではもう夜中だ。セントリウスに着いた時には既に空は暗く、人通りも少なかった。それは街中でも言えることで、歩いていても住民を見かけることは稀な時間帯だ。
「住民いないなぁ。日中はどれくらい活気があるんだろうか?」
「住居と言うか建物の数からして、ウエストリアよりは住民が少なそうだけどな」
「だろうな。と言うか、別にここに住んでいる住民が少ないんじゃなくてウエストリアが多いだけだろう」
「たしかに」
ウエストリアの住宅は結構密集している。住んでいる住民が多いのもあるけど、王都であるから城が存在している。それの影響で住宅地が狭くなっていると言うのもあるだろう。単純にセントリウスよりもウエストリアの範囲が狭いと言うのもあるかもしれないが。
「あそこがリスポーン地点のようだ」
「やっぱ、噴水だったな」
よし。これで死んでもウエストリアまで戻されることは無くなったな。安心安心。
全員がリスポーン地点の更新を済ませた後、直ぐに総合ギルドの方に向かった。さすがにそろそろ2人のログアウト時間が迫って来たので、寄り道はしない。
ギルドに付くとそこにも住民の姿はほとんどなかった。
まあ、時間の所為だろうけど。俺たちは唯一開いていた受付の窓口へ向かった。
「初めてここに来たんだが、登録をお願いしたい」
「えーと、異邦者の方たち…でしょうか?」
「ああ、そうだ」
「そうですか。貴方たちで2人…2組目?になりますね」
「どう言うことだ?」
受付の女性の微妙な言い方が気になったので聞いてみる。
「ああ、いえ。別に深い意味は無いんです。最初に来た方が1人でしたので、どう言うべきか迷っただけです」
そう言うことか。と言うかその1人のやつってアユの事だろな。
あれ? そう言えばアユは今何処に居るんだろうか。もう夜だから街の外に狩りにでも行っているのかもしれない。
「登録するので、ギルドカードの提示をお願いします」
「ほいよ」
ふとももが渡したのを最初に俺を含めた他のメンバーは受付のカウンターの上にカードを出した。
「登録が済みましたのでカードを返却しますね」
「ありがとう」
エンカッセが全員分のギルドカードを受け取って、それぞれにカードを渡していく。ちゃんと通行許可の部分も更新されているな。ギルドランクの方のポイントも増えているし問題はない。
そう思ったところで視界の端にアナウンスの表示が現れた。
≪ワールドアナウンス
エリアBOSS【猛進のアッシュボア】がオウグラート・ダンフォーレ・もちもっちのパーティーによって初討伐されました。
ああ、イスタット側からも来られるようになったやつが現れたのか。しかもメンバーにイベントの1位と3位が居るとかすごいな。
「1位と3位が同じパーティーに居るとかすごいな。しかし、もう一人の方は知らないNAMEだが」
「あー、このNAME。確か30位台に居た気がするな」
「ふともも。お前その辺りのプレイヤーも確認していたのか?」
「ああ、次のアプデでクラン実装されるだろう? だったら有望そうなのは先に目を付けておかないとな」
いや、こいつ本当にこう言うところまめだよな。NAMEからは想像できないけど。
「まあ、こいつらもその内来るだろうが、俺らはそれより先にここに来られた。早く来られたからって、何が得かってことは無いがやれることは先にやっておこう。まあ、2人は先にログアウトだろうけどな」
「すまんな」
「おさきー」
そう言ってぎーんとジュラルミーんはログアウトをするために、ここに来る前にとっておいた宿の方に向かった。
「さて、俺らはこれから何をするか。出来ればあの2人を遅れさせるようなことはしたくないが」
「あぁ、じゃあ先にアユに連絡とっていいか?」
「まあ、構わないが、あの子の都合は大丈夫なのか?」
「駄目なら反応しないはず」
フレチャで連絡してみるが、反応は無しか。これはやっぱり狩りでもしているんだろうな。
「出なかった。たぶん街の外で何かしているんだろう」
「だろうな」
アユのRACEのことを知っていればこうなるのは予想できたか。出来れば一緒にプレイしたかったんだけどなぁ。
「そういや、あの奥って何があるんだ?」
ギルドの受付の横にあるどこに繋がっているかわからない通路が見えたので他のメンバーに聞いてみる。
「ウエストリアのギルドと同じなら生産施設なはずだけど」
「ああ、なるほど。俺には全く関係ない場所か」
俺はあまり生産には向いていないんだよな。どうしても作っている最中に集中が切れる、と言うか他のことが気になって失敗するんだよ。今まではアユがその辺りを支えてくれていたんだけど、今回はアユが完全にソロプレイしちゃっているし。
「何か気になるから覗いても良いかな?」
「誰も居ないと思うが」
「誰の邪魔もしないってことだから、むしろその方が良い」
生産中にいきなり視界に入って来るなってアユに言われたことも在るし、その方が良いだろう。
「まあ、好きにすればいいんじゃないか。特に予定は決まっていないし」
「んじゃ。ちょっと見て来る」
「いや、俺らもついて行くよ」
「おぉそうか」
さてさてUWWOの生産施設はどんなもんかね? まあ、他のゲームとそんなに変わりはないと思うけどな。
「あ、今そちらに行かない方が…」
「え?」
俺が受付脇の通路に入ったタイミングで受付の女性が後ろから制止して来た。そして、俺が後ろに振り向くよりも早く通路の向こう側から光が溢れ出し、俺の視界を真っ白に塗りつぶした。
「ぎゃぁああ!? 目がぁー! 目がぁー!!」
「お約束、乙」
いや、ふともも。マジでそう言うのじゃないから! マジで視界が真っ白になって、ってしかもダメージ入っているんだが!?
サンライズシープの攻撃でもここまで痛くなかったぞ!? どう言うことだってばよ!
そうして何が何やらわからないまま、俺は目の痛みから床に倒れ伏し、痛みが引くまで立ち上がることが出来なかった。
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