運営裏話・2

 

「イベント開始したが、出だしはどうだ?」

「今の所、問題は無いです。ウエストリアとイスタットの一部で渋滞が起きて苦情が入っていますが、まあそれは元から分かっていたことなので」

「わかった。何か問題が起きたら随時報告な!」

「了解」


 ・


「え、ちょっと嘘だろう?」

「どうしたー?」


 いきなり声が上がった所の近くに居た男が声を上げた者が見ていたモニターを確認した。


「ワイバーンが討伐された?」

「まだ2時間しかたってないんだけどー!?」

「どうした! 何か問題でも起きたか!」

「主任。あ、いえ問題ではないのですが」


 騒ぎを聞きつけて急いで駆け付けた主任に声を上げた者は歯切れの悪そうに答える。


「問題じゃないなら何で声を上げた?」

「あのですね、……予想以上に早くワイバーンが討伐されまして」

「ワイバーン? あれはまだ初期位置から動いていないだろう? それで討伐って」

「討伐したのはー、ああソロで……は? なんでソロで討伐できてんの!?」

「アバターNAMEはアユ。NAMEは秘匿していますね。って、ああこの子ヴァンパイアの!」

「あー、道理で。あの子ならソロでも討伐……できるか? このイベントで出るワイバーンって推奨人数10人くらいじゃありませんでしたっけ?」

「そんなもんだな。LV14で10人が適正討伐人数だな」

「RACEのことも考えるとLVとステータスを見る限り、出来なくはないか」

「ん?」

「どうした?」

「なんか、この子一直線に進んでいるんだけど」

「この方向だと……サウリスタ方面のワイバーンが居るところに近づきますねぇ」

「ああこれ、完全にワイバーンの初期位置バレてんじゃないですかね?」

「でしょうねぇ。普段のエリアBOSSが居る位置を初期位置にしたの完全に裏目に出ていませんか? 道が無ければ気付かれないだろうとか、完全に意味をなしていませんよね」

「過ぎたことだ。これは次回に生かすことにしようじゃないか」

「いい顔して言っても失敗は無くなりませんよ」

「ほら、お前ら問題じゃなかったんだから自分の持ち場に戻れ」


 主任の声で1つのモニターに集まっていた数人は蜘蛛の子を散らすように持ち場に戻って行った。


 ・


「イベントも2日目に入った! これからはPVPがメインになっていくと思うからその辺の監視はしっかりな。迷惑行為とかがあった場合は指定通りの方法で対処すること。まあ、その必要は無いと思うが、お仕置き用のモンスターとかで不具合があったら直ぐに報告して、修正に入る事」

「「「了解」」」


「レッドNAMEが討伐されてリタイアしました。不具合はありません」

「了解」

「思いの外早くリタイアしたなー。なんてNAMEだったっけ?」

「ププリ・ペペルペルポですね。さすがにもう少し粘ると思いましたが、2日目始まって1時間しか経っていないですよ」

「討伐者は、っと……ああ、安定のヴァンパイアちゃんか」

「討伐者が誰であろうと問題は無いですよね」



「あーこれは、迷惑行為だな。システムは……問題なく稼働していると」

「迷惑行為ですか?」

「1プレイヤーに多数で攻撃を仕掛けている感じだ。おそらく、無理やりペナルティモンスターを出して、ポイント半減させたいんだろう。ターゲットになっているプレイヤーは現在2位だし」

「なるほど、システムがちゃんと稼働しているなら大丈夫ですね。プレイヤーは……見る限り十分捌けていますし、問題は無いでしょう」

「そうだな。しかし、こいつらそろそろ無駄なことをやっているって自覚できんのかね。さっきから一切ペナルティモンスターが出てこないことは理解しているだろうに」

「いいじゃないですか。何をやるのも自由ですよ。それにこれで1位と2位の差が埋まりそうですし」

「ああ、まあ確かに。1日目が終わった時点でトリプルスコアだったしなぁ。さすがにあれはバグだと思ったが」

「討伐数が異常でしたからね。バグじゃなかったのは良かったですけど、あそこまで差が開いてしまうとイベントが盛り上がらなくなりますから」

「まだ2日目は半分以上残っているからどうなるかわからないけどな」


 ・


「そろそろイベント終わるぞ! ポイント集計はなるべく早く結果が出せるように準備しておけ!」

「「「りょーかーい」」」

「このままいけば、1位と2位がギリギリ逆転しそうだな」

「そうですね」

「他の順位はもう殆ど固まっちゃってますよね。2位の方はまだ上がり続けていますけど」

「1位のポイントの伸びがここ数時間悪いんですよね。慢心でしょうか」

「うーん。あーこれはあれじゃね? ポイント調整」

「調整?」

「多分2位になるようにポイント獲得しない様に動いていると思う。多少増えているけどそれも100ポイント以下だから、モンスターだけ倒しているんじゃないか?」

「いや、自分から順位を落とそうとするなんて普通じゃないですよね!?」

「普通はそうだと思うが、何か理由があるんだろう。単に目立ちたくないとかかもしれないけどな」

「目立ちたくないなんて、今まで1位をキープしていた時点で相当目立っているじゃないですか」

「いや、俺に聞かれてもわかる訳ないだろうよ」


 ・


「イベント終了で確定ポイントと各ランキングは出した。後はイベント報酬の配布で今回のイベントは終了だ。まあ、その後もやることはあるがそれは俺たちの役目じゃない」

「主任。チケットの配布数は規定通りで大丈夫でしょうか」

「うーん、まあ大丈夫だろう。馬鹿やってポイント2桁のプレイヤーもいるが、それにもチケットは配布する予定だしな」

「わかりました」

「ランダムチケットから出る“特別な”シリーズは制限しなくて大丈夫ですか? おそらくランキングトップ3は確実に獲得できてしまうと思いますけど」

「あれは現段階では確かに性能は良いけど、ずっと使える程良い訳じゃないから問題ないだろ」

「そうですかねぇ。確実に荒れると思いますが、主任がそう判断されるならこちらはそのようにしますよ」

「おう、そうしとけ。っと、他に確認したいことがあったら言えよ。…無いなら各自作業を進めるように」

「「「「了解」」」」

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