第35話 やっとチュートリアルだ


 リスポーンポイントを更新した後は総合ギルドに戻ってきて時間を潰した。

 一旦ログアウトすることも考えたけど、他の確認もしたかったし、そうしている内に時間が過ぎてしまったのでログアウトはしなかった。


 見ていた感じ、基本的にギルドは8時くらいが一番忙しいようで一気に人が増えた。

 少なからずもめごとのようなことが起きていたが私は初めから端によって【隠蔽】で気配を薄くしていたので、何か声を掛けられたとか絡まれたとかはなく過ごすことが出来た。


 そうこうしている内に時間はそろそろ10時になる所なので、少しすいてきている受付に行ってチュートリアルを進めて行こう。


「すみません。チュートリアルを受けたいのですが。あ、これは先に作ってあります」


 担当する受付の人が違うので先持って仮のギルドカードを提示しておく。それを受け取った受付の人はカードを確認してカードを私に返してきた。


「確認しました。JOBの方は錬金師と言うことなので、あちらの奥に進んだところに生産系のチュートリアルに使われている部屋がありますのでそちらに向かってください。担当の方もすでに居りますので、仮のギルドカードをその方に提示していただければ、次の説明に進めるはずです」


 ここからだと確認しにくいけど受付の人が指した方には通路が見えた。あそこを進んで行けばチュートリアルが進められると言うことだろう。

 私は受付の人に会釈して通路に向かって歩いて行った。




 通路の先は思いの外広い空間が広がっていた。一応ここは部屋と言う扱い何だろうけど所々生産用の設備が置かれている。多分だけど各生産系JOBの最初の指導とか道具や設備の使い方を教えてくれる感じなのだと思う。

 部屋の入り口にいた受付と思われる場所にいた人に仮のギルドカードを渡した。


「チュートリアルを受ける方ですね。えーとJOBは錬金師ですか。そうなりますと、担当の方を呼んできますので、あちらの中央付近にあるテーブルに座って待機していてください」


 そう言うと受付にいた人は奥に引っ込んでしまったので、指示された通りテーブルのある所に移動する。中央付近と言っていたけど、部屋の中央なのかおいてあるテーブルの中の中央なのかどっちなのだろうか。


 取り敢えずおいてあるテーブルの中の中央に座っておこう。テーブル自体は4人掛けの物だけど複数人で使うことを前提としていないのか、椅子は2脚しか置いていなかった。


「ごめんねー。お待たせしました。チュートリアルを受けるのは貴方であっているよね。他にいないしねー」

「あ、はい。そう……です」


 なんか間延びしたようなそうでもないようなつかみ辛い話し方をする人が来たな。ぐいぐい来る人より大分ましだけど、どうなるのか。わかりやすく簡潔ならいいのだけど。


「だよねー。私はレミレンって言います。いつもはギルドの鑑定士をしてて、チュートリアルの方が副業?って感じです。担当は調薬と錬金。貴方は?」

「え、あ、アユって言います。よろしくお願いします」

「よろしくー。まあ、そんなに時間も掛からないと思うし、さっさと進めて行こうねー」


 レミレンと名乗った女性はそういって持っていたカバンから道具を取り出していく。これって私が使う道具はどうなるのだろうか。この場で買うことになる? それともくれるのだろうか。


「使う道具はこんな感じだねー。基本的に錬金はこの錬金板って言うのを使うんだ。で、これはアユにあげるねー。まあ、総合ギルドで初めてチュートリアルを受ける人にはJOBに応じた物をあげているんだけどねー」


 あ、良かったくれるんだ。なるほど初回特典的な扱いで道具はくれる形になっていると。まあ次を受ける意味はないだろうから2度目とかは考えていないけど。


 レミレンから錬金板を受け取る。錬金板は直径40センチくらいの円形の板で六芒星が書かれていた。六芒星の頂点には円形の窪みがあって、中央にも他の窪みより少し深い窪みが彫られていた。窪みの中心は平らになっているのでここに器とかを置いたりするんだと思う。


「でー、これからやるのは、錬金板の使い方と基本的なレシピとしてポーションを作ってもらいます」

「…はい」

「まずー、錬金板の使い方は見て分かる通り窪みに使用する素材を置きます。あ、場所はあまり気にしないで大丈夫ー。で、魔力を流しつつ作りたい物を思い浮かべます。すると成功すれば思い浮かべた物が出来上がるという仕組みです。正直感覚でやる部分が多いからー、1回やってみてその中で指示するね」


 想定外にやんわりとした説明だった。しかも感覚でやるってことは正確なやり方がわかりづらいと言うことで、これは割と面倒な奴じゃない? 多分ポーションとかなら簡単にできるんだろうけど、難しくなってきたらどうなるんだろうか。


「えっとー、これが材料ね。小薬草2枚。これを外側の窪みに入れて魔力を流せばポーションが出来ます。と言うことで、やってみてねー」


 小薬草?と言うアイテムを渡された。私が持っている薬草の半分くらいのサイズだ。ふむ、こんな物あったんだ? と言うか薬草が一番レアリティ低い回復アイテムだと思っていたのだけど、違ったのか。

 言われた通り、小薬草を錬金板の窪みに1枚ずつ置く。そこから魔力を流す…どうやって流すんだろう?


「あの…魔力を流すって、どう…やるんですか?」

「え、あっ。ごめんね。最初だからその辺もわからないかー。って言っても、これも感覚でやる感じだから、でもまー例えるなら魔術系のスキル使う感じが1番近いかな。それもわからないって言われたら、とりあえず力を籠める感じで錬金板持ってみるとかそんな感じ?」

「なる…ほど?」


 魔術スキルを使う感じか。あんまり意識してやったことないからわかりづらいけど魔術系のスキルを使う時みたいに出したいところに力を集める感じでいいのかな? とりあえずそんな感じでやって…。


「とりあえず、【MP操作能力向上】系のスキル持ってたりするとわかりやすくなるかもねー」

「え?」


 何それ?

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