第33話 セントリウスに到着


 セーフティーエリア外でログアウトとしたのが不安だったのでいつもよりも少し早くログインした。

 特に問題は起きていないようだ。良かった。


 そういえば、壁のところで人に会った時に称号を手に入れていた。会話中にアナウンスがあって、状況的にウィンドウを操作するとより怪しまれそうだったから無視していたけどその時に取得した称号(タイトル)はこれ。



【サバイバー】

 長時間ASを稼がず、且つ人に会わなかった者に贈られる称号(タイトル)

 過程はどうあれ貴方は生き残った。なぜこのような状況になったのかは聞かないが、周りに誰もいない一人だけの状態で本当によく生き残った。生きていると言うことは大変喜ばしい事である。


 獲得方法:ゲーム内時間で100時間ASを一切稼がず使わず、且つ人に会っていない状況で、住民またはプレイヤーがいるセーフティーエリアに到達する。

 効果:セーフティーエリア外、且つ戦闘時以外での行動にボーナス(微)が発生する。



 まあ、使えなくはないかなぁって感じの称号。マイナス要素もない感じだし、とっても損はしないやつだった。


 いろいろと確認した感じ問題はなさそうなので先に進むことにする。壁の所にいた人に聞いた通り、結構向こうに建物らしき物が見えるけど果たしてどれほど離れているのか、夜のうちに着きたいところなのだけど。



 ログインしてから3時間たったところでようやく遠くから見えていた建物のある街の入り口が見えてきた。

 ようやくちゃんとした人のいる場所に着けそうだ。街の入り口には門番的な人が立っているのが確認できた。とりあえずそこに向かって行こう。また止められるだろうけど、変なところから入って後々問題になったりする方が面倒だと思うし。




「止まれ!」


 予想通り街の入り口に着くと警備の人に止められた。言われた通り止まったのだけど、入口から結構離れたところで止められたな。入口に門とかがある訳じゃないから、止まったと見せかけてから走り出したりして強引に中に入ろうとする人に対するものなのだろうけど、警備の人が1人しかいないのに何か意味があるのだろうか。


「何の用事でここに来た。それと身分がわかるような物があれば出せ」

「……チュートリアルを受けに」


 壁の所にいた軍人らしき人に通じたのだからおそらくこの人にも大丈夫なはずだ。ただ、警戒しているのいるのはわかるけど5メートル近く離れた状態で話しかけるのはどうかと思うのだけど。


「チュートリアル……? 総合ギルドに用があると言うことか?」

「そう、あと私異邦人…です」

「異邦人? それなら普通3国の総合ギルドで受ける物だと思うのだが」


 そう言われても受けられない物は受けられないのだからさっさと通してほしい。同じようなくだりは一回で十分だ。


「とりあえず、異邦人で総合ギルド行ったことないってことは身分証扱いのギルドカードも持っていないと、どうしたらいいんだこれ」


 反応を見るからして警備の人は判断に困っているようだけど、わからないならわかる人を連れてくればと思うけど、今は早朝と呼ぶにも早い時間だから他に人はいないのだろう。


「まあ、そうか。ううむ、とりあえず通っていい。が、ギルドに登録してギルドカードを作ったらここにまた来てくれ。俺はそろそろ交代の時間だが、昼過ぎにはまた戻ってくることになっている。まあ、居なかったらここに来るようにアルクスに言われたとでも言ってくれ。話は通しておくから」

「そう。ありがとう」


 何だかあっさり終わったような気はするけど、どのみち戻ってこないといけないから終わってないともとれるか。

 そんなことを考えながら私はマップにあるチュートリアルが出来る場所を示す矢印に従って歩いていった。



 入口から早歩きで30分程行ったところに矢印が示す建物があった。よくわからない文字が書かれた看板が出ているけどここが総合ギルドと言う場所だろうか。わからないからとりあえず【鑑定】してみる。うん、総合ギルドで間違いないようだ。問題はこの時間に人がいるかどうかだけど。

 総合ギルド中に入ると殆ど人はいなかった。受付らしきところに1人と大き目のカウンターの近くに1人いるくらいで他に人の姿は見つけられない。受付らしきところに行ってみる。


「あ……あの」


 受付らしきところに座っていた人は半分近く眠っていたようだけど、私が声を掛けたことで意識がこっちに戻ってきたようで驚いたような表情でこちらを見て来た。


「おっと、すみません。こちら総合ギルド受付になりますが、何か御用でしょうか?」

「え、あ、チュートリアルを受け……に来たんですけど」

「はい? こんな時間に? あ……いや、もしかして異邦人……の方でしょうか」


 まあ、確かに早朝前の時間だからそう言われても仕方ないけど、できれば声に出さないで欲しかった。


「そう…ですね」

「そうですか。そういう事なら改めて言う必要がありますね。では、ようこそいらっしゃいました。こちら総合ギルドセントリウス支店になります。そして貴方はセントリウスに辿り着いた初めての異邦人になります。まあ何か特典がある訳ではありませんが、おめでとうございます」


『アナウンス

 中央都市セントリウスが地図に登録されました。

 マップが更新されました。


 アナウンス

 プレイヤーの中で初めて中央都市セントリウスに到達しました。これにより条件を満たしたため称号(タイトル):【セントリウスの初到達者】を獲得しました。

【セントリウスの初到達者】

 プレイヤーの中で初めてセントリウスに到達したものに贈られる記念称号(タイトル) 特別な効果はないが初めてセントリウスに到達したことを証明することが出来る。貴方は誰よりも早くフィールドを駆け、先に進み誰よりも早くセントリウスに辿り着いた。おめでとう。貴方の努力はこういう形で実を結んだ。しかしここで終わりではない。より先へ進みこの世界の多くを見て感じてくれることを切に願っている。


 獲得方法:中央都市セントリウスの総合ギルドの受付にプレイヤーの中で初めて声を掛ける。 』


 ≪ワールドアナウンス

 プレイヤーの中で初めて中央都市セントリウスに到達した者が現れました≫

 


 アナウンスェ。どうにかしてワールドアナウンスをさせない方法はないだろうか。アバターネームが出ないことは確認しているけど、こういうのは出来ればして欲しくないのだけど。


「どうかしましたか?」

「あ、なんでもないです」

「そうですか? では、チュートリアルを受けに来たと言うことなのですが、時間的に担当する方が居ませんので今できる部分を進めて行きましょう」


 時間的にやっぱり駄目だったかぁ。ありがたいことに今出来るところは進めてくれるようだけどこの後のチュートリアルが進められない場合はどうなるのだろうか。


「今から仮のギルドカードを作りますので、こちらのボードに必要なことを書き込んでください。書き込む内容についてはそのボードに書かれた通りにしていただければ問題ないようになっています。本来ならあちらに行って書き込んでもらうのですが、他に誰も居ませんしここで書いてもらっても大丈夫ですよ」


 そう言って受付の人は椅子や机が置かれた休憩スペースのような場所を指した。わからないことがあったらすぐに聞けるしここで書いた方がいいんだろうなぁ。私的にはどっちでもいいのだけど、受付の人も良いって言ったしここで書き込もう。


「じゃあ、……ここで書きます」


 そう言って私はボードに書かれた内容を読み始めた。

 ボードに書かれた内容は、身分証として使うためのアバターネームとRACE、所属国などを記入するようだ。あれ? ネームとRACEはいいとして所属国はどうすればいいんだろう。


「あの、この所属国……についてなんですけど」

「所属国は主に活動する国の事ですね。簡潔に言うと、活動の拠点がある国と考えればいいと思います。そういった場所がない場合は記載する必要はありませんが、記載した国で活動する場合にほんの少しですが特典がありますので、決まった国で活動する場合は書き込んだ方がよいと思います。まあ、ここで活動する場合は何の特典もありませんけどね」

「理解しました。ありがとうございます」


 なるほど主な拠点か。私の場合はどうなるのか。少なくとも今から第1エリアで過ごすのもあまりメリットはないし、無所属でも問題ないかな。


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