第4話 早すぎた死。そして奇襲される
起きた。お早いお戻りでしたね、私。
とりあえず棺桶から出よう。まずはそれからだ。
外に出て直ぐにリスポーンしたせいでテンションが可笑しくなっているが、気にしない。まずはこれからどうするかを考えないと先に進むこともできないだろう。
まず、死に戻りした原因はスキル【日光脆弱】によるスリップダメージだろう。ヴァンパイアは能力が高い分、【日光脆弱】のようなデメリットスキルを強制的に取得させられてステータスの高さを相殺させる形のようだ。
だけど、1秒で1%のダメージは多すぎる。某銀色の巨人よりも日中での活動時間が短いとか、どうしろというのか。いや、日中でも日差しが入って来ないこの部屋だとダメージを受けていないということは、おそらく日陰とかに入ればダメージ量が減るか0になる可能性はあるのか。
とりあえず、ステータスの確認から今後どうするか予定を立てよう。確か、LV5まではデスペナルティはなかったはずだからステータスは下がっていないだろうけど。ふぅ、今後を考えるとテンション下がるわー。
言葉に出すのも面倒くさくなってきた、念じたら出たりして、ステータス。まあ、出るわけないよね、って出たし。言葉に出さなくても出てくるじゃないですかー、C-633ェ。
もしかして鑑定も出来たりして、とりあえず試しに鑑定! うん……出な、あ、出た。
[データウィンドウ]
ステータスや鑑定と唱えるなどで出現する唱えた人の能力や対象の物の詳細が見られる窓。プレイヤーのみならず、アーウェルスの住民も見ることができる。一部を除き、任意で許可を出せば他者に見せることが可能。どういった仕組みで発生しているのかが一切解明されていない不思議な窓。アーウェルスの世界の不思議の一つ。
鑑定も声に出さなくてもできるのか。というかウィンドウで一纏めにされているみたいだけどステータスウィンドウって鑑定できたのか、さすがにびっくりした。
でも、ウィンドウが出てくるのが遅いのは声に出していないからなのかな。声に出したときは一瞬で出てきたし、何かしらデメリットでもあるのだろうか。
まあ考えたところで答えは出ない。当初の目的通りステータスを確認しよう。
見る限りデスペナは無いようだ。ってうわー、AS減ってる。さすがにノーリスクではないのか、さらば私の300AS。これ、チュートリアル受けるまでに所持金0ASになってそうだね。
おや、【鑑定】の熟練度が1%になっている。今までに鑑定したのは、これを合わせて10個かな。ということは10個ごとに1%上がる? いやそれだと簡単すぎるから10種類ごとな気がする。ずっと同じように上がっていくとは思えないけど【鑑定】の熟練度100%にするには最低でも1000種類鑑定する必要がある? まだ先の話だろうけどどれだけ時間かかるのだろうか。
とりあえず他は、あれ【日光脆弱】が99%なってる? 100%で最大だったはずだけど、もしかして減っていくパターンもあると? ということは太陽克服可能ということなの?
もし可能なら【日光脆弱】の熟練度を下げるのを先にやっておいた方が良いかもしれない。少なくとも現状日中に活動できないのが一番の問題なのだから。
とりあえずもう一度外に出てどれくらいで【日光脆弱】の熟練度が減るのか確認しよう。ステータスウィンドウは……出したまま動こうとするとウィンドウに引っ張られている感じがするから、出したままだと移動できないのか。
ウィンドウを消してから外に出る。そしてまた、ステータスウィンドウを開く。
おお、どんどんHPが減っていく。そろそろ視界が赤くなって……まだ熟練度は減らないのか。うーん、あーHPが0になった…って熟練度も下がった。
『HPが全損したため、当アバターは死亡しました。周囲に蘇生が可能なプレイヤーがいないため、蘇生待機時間を短縮します。最も新しいリスポーン地点に転送します』
と言うことで、リスポーンして棺桶にイン。
試してみて、HPの全損と同じタイミングで【日光脆弱】の熟練度が1%下がったことから、太陽の光で総HPの100%分ダメージを受けるごとに熟練度が1%下がると言ったところかな。他でダメージ受けてないからおそらく、絶対じゃないけど。
というわけで、日差しにゾンビアタック……する前に、廊下の左側を確認した方がいいな。夕飯食べるからリアル18時にはログアウトしないといけない。そうなれば確認してからゾンビアタックした方がスムーズだろう。そうして私はまた棺桶から出て廊下の左側の確認を進めることにした。
廊下に出て左へ進む。
隣の部屋はドアが残っているのか、反対側はないというか瓦礫によって壊れた感じだな。とりあえず、ドアのない部屋から見て行こう。
何もいないと思うけど、ドアのない部屋の中をそっとのぞき込む。うん、何もいない。むしろほとんど物もない。辛うじて棚だったとわかるものと、半ばから足の折れた丸テーブルがあるくらいだ。棚に関しては本棚だったのだろうか、本が一冊だけ残っている。とりあえず鑑定。
[知らない言語で書かれた本 Ra:Ep Qu:F Du:-/-]
あなたの知らない言語で書かれた本。日記のような魔導書のような、書き方が不規則に変わっているためどのような本なのか書式だけでは判断できそうにない。何らかの保護魔法がかけられているようで完全に破損することは無いようだが、経年劣化が激しく真面に開くことが出来そうにない。この本を読むには復元魔法で読める状態に戻し、対応する言語を覚える必要がある。
レア度が高いし、フレーバーテキストが長い。何らかのキーアイテムの可能性があるかも。この本は確保しておこう。後は、床にコップらしきものがある。取っ手が取れているがテーブルが破損したときに壊れたのだと思う。
[取っ手のとれたマグカップ Ra:C Qu:F Du:40/100]
どうしてか取っ手のとれてしまったマグカップ。コップとして使うのは少々危ないが、液体を入れる器としてはまだ使えそうだ。
ギリギリ使える範囲かな。まあランタンと一緒で邪魔になったら捨てるだろうけど、2つあるから両方拾っておこう。たくさんホコリが被っていて汚かったから【生活魔法】の初期魔法であるクリーンできれいにしてからインベントリにしまう。本も同様にきれいにしてからしまった。
さて、次は廊下の突き当りにある瓦礫を確認しよう。
部屋から出て一番近い瓦礫をどかしてみる。
あれ、動かせない? もしかしてこの瓦礫の山一塊で、一つのオブジェクトとして成り立っている感じなのかな。うーん、あ、ここは動かせる。あれなんか下にある?
動かせたがれきの下には少し空洞があり、その奥に何か金属のような物が落ちているようだ。私はその空洞に腕を入れてそれを取り出そうとした。
思いの外空洞は奥行きがあったようで、腕は肩程まで入ってしまっている。
これ、現実だったら瓦礫の角とかで絶対にケガしている。腕入れているせいで中が見えないからゴリゴリ当たっている。視界の端にあるHPバーは1ミリも減っていないから、ダメージは入っていないみたい…ん? 何かバーの向こうに…っておわっ!?
え、なんか来た。HP減ってる!? ちょっと待ってなに!?
私はあわてて腕を引き抜いて何かが居た方に急いで向いた。振り向くと10センチくらいのネズミがこっちへ向かって攻撃を仕掛けてきているところだった。
おわー、ネズミ―! 痛覚オフにしているから痛くはないけど衝撃は来る。そして、視界が揺れる。
ちょっとネズミ。何で顔ばかり狙うの!? この顔に何か恨みでもあるんですか。ああっまた来た、ってHPバー邪魔ぁああああ! またバーの向こうから攻撃された。やばいこのままだとネズミごときに死に戻りさせられる。一撃当たりのダメージは5くらいだから簡単には死なないけど、何もしなければ死んでしまう。
初心者のナイフ構えて攻撃、の前に鑑定!
[(モンスター)ビッグラット(小) LV:5 Att:闇]
HP:24/24
MP:3/3
スキル:夜目
ビッグなのに小とはいったい。LV負けてる、まだLV1だから当たり前だけど…ってあぶなぁい! とりあえず攻撃!って外した。背中ぁああ!
あれぇ、なんかこれむずくない? そもそも動き回る10センチのネズミに刃渡り15センチくらいのナイフをまともに当てるのって、普通にかなりの技術いるよね。
そいっと! あ、ちょっとかすったっぽい。ネズミの上に出ているHPバーが全体の4分の1くらい減っている。量的にはネズミの体当たりと同じか少し多いくらいの5か6くらい? サイズ的にかするだけでもネズミにとっては大ダメージってことなのだろう。
えいっ、やっ、とお! 当たらなぁい! そのくせネズミの攻撃は当たるー。的のサイズが違うからね、仕方ないね!!
おりゃー、当たったー。おお、まともに当たったからネズミのHPごっそり減った。残り20%くらいかな。ってまたHPバーの向こう側から攻撃してくるなー!
そこだー!! 体当たりの後の隙を突いてネズミに向かってナイフを突き出す。ナイフはネズミの横腹くらいのところに当りダメージを与えた。
そうしてHPが0になったネズミはポリゴンになって消えていき、その後にアイテムがドロップした。
[(アイテム)ビッグラット(小)のしっぽ Ra:C Qu:F SAS:1]
ビッグラットの子供のしっぽ。討伐の証として扱われ、総合ギルドなどに10個以上を持っていくと常時討伐依頼を受けていた際に依頼が達成できる。討伐後に依頼を受けることも可能。
(小)って子供っだったってことか。それよりしっぽいらない。あんまり触りたくないし、1個じゃ意味なさすぎる。
ああ! HPが83まで減ってる。ネズミに50近いダメージを負わされたのか。しっかり倒したけど、おのれネズミよ。
とりあえずまず、視界の端にあるHPMPバーを設定を弄って消す。見えた方がHPMP管理しやすいと思っていたけど、まさかあんな欠点があるとは。
気づけた相手がネズミだったのは幸いだった。もっと強いモンスターだったら何されたかわからないうちに一撃で殺されていた可能性もあったのだから。
さて、では瓦礫の中にある物を取り出そう。周囲を警戒しながらまた瓦礫の隙間に腕を入れる。そして肩まですっぽり入れたところで指先に金属らしき感触を感じて、それを掴んで取り出した。瓦礫の隙間から取り出したのは少し汚れた腕輪のようなものだった。
[(アクセサリー)幸運の腕輪(劣) Ra:Uc Qu:E Du:87/100 SAS:300]
装備することで幸運が訪れると言われる腕輪。経年劣化により本来の効果を受けることはできない。元の状態に近付けることが出来れば、本来の効果が受けられるかもしれない。誰かの幸せを願い作り上げられた腕輪。
装備効果:LUK+2
うーん、無いよりはましって感じだ。とりあえず【生活魔法】で綺麗にしてから装備した。
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