第17話

 「あと、灰猫傭兵団にもこのことを伝えよ!こういう時の為に飼っているのだからな!」


 「了解しました。小職しょうしょくは、伝令を継続します。それでは!」


 「おう、気をつけてな!!!」


 エリオスは後ろを振り向き、にわかに、家令かれいの名を呼んだ。


 「エドワーズ!エドワーズ!」


 すぐさま、初老しょうろうの物静かな男が、早足で近づいてくる。


 「どういたしました。随分、騒がしいようですが・・・!」


 「ああ、朝駆あさがけをされたようだ。」


 「な・・・!まだ、。他の四ヶ国とは不可侵条約ふかしんじょうやくが・・・。」


 「いや、今度の敵は恐らく、身内だ。」


 「な、なんと!」


 「気にするな!今は、時間が無い!!話は、支度したくをしながら、するぞ。甲冑かっちゅうを持て!!」


 中佐は 居丈高いたけだかに叫んだ。


15

 

 まさに、屍山血河しざんけつがの、惨状が現界してあった。

スクワイア監獄に襲来してきたのは、かつての斬り込み隊、しくは、威力斥候隊いりょくせっこうの二個小隊、約三百であった。 


 首謀者は、言うまでもなく、ブライアン軍曹である。

衛兵はほぼ剿滅そうめつされた、後である。そこらあたりに、凄惨な血肉が焼けこげた、異臭が空て気中に、風が撹拌かくはんしていた。


 かつて、金城湯池きんじょうとうち山塞さんさいだった、スクワイアをいともたやすく,攻抜した巨魁きょかいは中央の、広場に腕を組み、仏頂面ぶっちょうづらで、その巨体を強かな下腿が支えている。


 まるで、樹齢、数百年の大木の様だった。

全身に、ドットのタトゥーが、出現している。


 魔薬異能力を発現中なのだ。

彼の胸中には、色々な想いが去来しているのだろう。

そこに、一人の部下が駆け足でやって来た。そして、拝跪はいきした。


おそれながら、ブライアン軍曹殿。ほぼ、衛兵共は掃討しつくした模様です。物見櫓ものみやぐら占拠せんきょしました。これで、このスクワイア監獄は、我々の支配下になったと言って差し支えないでしょう。」、


「よろしい。いい知らせだな。これから、軍属、文臣共の吠え面が拝めるぞ!!」


「ははは!、良い様ですな!」の


「・・・ただ、そのまえにエリオス中佐殿の動静は気がかりだが。」


「・・・もう、はらは決まったのでしょう・・・。」


「ああ。勿論さ・・・。だが、やはりね、俺も人間だから、多少はやりづらいがな・・・。まあ、もうさいは投げられたから仕方がないが。」


「・・・公国の軍に一石を投じる壮挙そうきょになる筈ですよ!あと、グレコ将軍の事ですが・・・。」


 「ああ。その事は良い。俺に任せておけ。」


 と、返答すると、屈強くっきょうな肉体を躍動やくどうさせ、地下室の通路の方に姿を消していった。

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