公国の遺贈者(Legator)『第8回カクヨムWeb小説コンテスト』参加作品(長編・異世界ファンタジー部門)
田渡 芳実 (たわたり よしみ)
第1章 大戦の残渣(たいせんのざんさ)
第1話
その名も無き町の
少年の
単純な力仕事であるから、まだ春先だが、こめかみから
その若者が
ドッターーーン!!!
曲がり角に
「痛てて・・・この野郎!!どこ見て歩いてやがるんだ!!!」
通行人の男が
この男はオーヴィル公国軍人のようだ。若者は「いや、仕事中なので、届け先の住所が書いてあるメモを見てました。」と
一瞬、軍人の男は、
「
そう男が叫ぶと
呼び出された男達は皆、屈強な公国軍人であった。
周囲の人々は騒然としてきて、その場の空気が
しかし、若者は全く
長身の軍人が言った。
「おい、貴様!!我々を誰だと思っているのだ!!我々は先の大陸大戦で常に
この一言で民衆は完全に
数分前から若者を中心に
「フェーデだ!!フェーデで決着をつけるぞ!!お前も男ならば、
と言った。
フェーデとはもともとは、自力で救済する決闘を意味していたのだが、このタトゥーの軍人の様に
若者は、また何の反応も無い。
次の瞬間、予想だにしない事が起こった。突如どこからともなく小石が飛んできてタトゥーの軍人の
「うぐっ!!!一体誰だ!!??」とタトゥーの軍人が叫ぶ。衆目が一致した所には、一人の少年が居た。
「この
その少年は間違いなく少年だった。年は10歳くらいであろう。愚直なほどの剛直さを中核とする精神は周囲の大人達がいつしか、忘れてしまったものだった。いや、
ともかくタトゥーの軍人は激昂した。額から血を
「このクソガキ、生意気な事を言いやがって!!公国軍人の恐ろしさを思い知らせてやる!!」
と言う
さっきから、人力車の若者は何の反応も無く、
流石に少年は血の気が引き、この一角を
この国を代表するような、命知らずの荒くれ者を完全に怒らせてしまったのだ。
「おい!!貴様!!いい加減にしろ!!!いくら頭に血が上ったとはいえ、
暗く
「頭に血が上ったと言うよりは、
「下らぬ
今度は周囲の
タトゥーの軍人に2ヤード(約1.8メートル)ほどまで近づいたとき、白金の騎士がまた、口を開いた。
「貴様、グレコ・ローマン将軍の
それに対し、
「そういう、あんたは最近この辺で勇名を
「ああ。そうだ。私はその白金の騎士だ。
2人の間に異常な緊迫感が走る・・・。周囲も事の流れを見守るしかない。
「チッ!!余計な邪魔が入って
ようやく、この街区に平穏な空気が
人力車の若者はまだ地面を見つめ、
一人の中年男性がブライアン軍曹に小石を投げつけた少年に駆け寄っていく。
「おい、エピ!大丈夫か!?」エピと呼ばれた少年もあまりの恐怖感の為、腰が抜け、その場から、立てなくなってしまったのだ。
人力車の若者の方には老年の女性が近寄り、
しかし、この若者の異様な
自分の
「ああ、あいつはリッケン爺さんの所の奴だな。何でも5年前の大陸大戦の時に記憶喪失になっちまったらしいぞ・・・。」
一同はそれでようやく納得した。
人々はこの国における戦争の後遺症に対し 、
夕陽に向かって人力車を黙々と若者は引いていく。その背中をエピ少年も、白金の騎士もいつまでも見続けていた。
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