第10話 眠気
夜明け前。水原はサエをつれて黒鉄屋を出て行った。先導は山崎。まかせておいて問題ないだろう。
眠気と疲労が、いっせいにさくらを襲った。
若女将のサエがいなくなったことはすぐに発覚するだろう。それを見届ける。口出しはしない。ある程度観察したら、すぐに去る。歳三にはなんと言おう。山崎に借りを作ってしまった。しばらくは頭が上がらない。総司と打ち合わせをしておかないと。あいつは、余計なことを漏らしそうだ。
するべきことが山積みだった。頭が重い。ほんの少しだけでいい、横になって休みたい。
「だが、これか」
自室に戻ったさくらの目に飛び込んできたのは、ぴったりくっついたおふとん二組。さくらの分と、総司の分。宿には夫婦設定で伝えてあるので、当然なのだがちょっとだけ目が覚めた。
「これは、やりすぎですね」
総司も、顔を赤くしながら、ずりずりとふとんを動かして離した。間に衝立を挟む。これでどうにか、お互いの寝姿は見えなくなった。同じ部屋で寝るのもどうかと思うが、ほんの二刻ほどならば我慢しよう。これは密命。
総司が衝立の向こう側に隠れたのを確認したのち、女の着物をほどくと、さくらはふとんに入ってすぐに寝た。
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