第72話 ファンタジー世界定番のアイテムの話

あの後、あたしと瑶さんはあたしの魔法を試しつつ順調に魔物狩りをすすめていた。あたし達の殲滅戦を見せつけたあと、あのハンター達はいつの間にかいなくなっていたので遠慮なく経験を積ませてもらっているのよね。そして今は少し休憩中。


「この世界のオークが食用でなくてよかったね」

「あはは、そうですね。これだけの獲物を全部持ち帰るとかなんて無理ゲーって感じですよね」


今更ながらこの世界の魔物が基本的に食用でない事にホッとしたわ。とは言ってもハンターとして活動する以上は食用肉はきっといつか扱う事になるわね。普通の食用肉ではなくてきっとレア食材だとは思うけど。実際あたし達も最初の1カ月はウサギの肉に助けられたものね。


「うーん、それがある程度以上稼ぐハンターや傭兵にとってはそうでもないらしいよ」

「え?こんなのを担いで行動できるほど、体力お化けになるってことですか?まあ、あたし達の身体もこの世界にきて随分と高性能ですけど、どんな力持ちになっても担げる量にはやっぱり限度があると思うんですよね」


「いや、商業ギルドでの勉強の合間に聞いたんだけどマジックバッグってのがあるんだって」

「え、あるんですか?ファンタジー定番のマジックバッグ?やっぱりメチャクチャ沢山入ったり、重さもほとんどなくなったり、時間もとまったりするんですか?それで値段も滅茶苦茶高かったり。場合によっては殺しても奪う的なアイテムだったりしたりするんですか?」


あ、つい瑶さんに詰め寄っちゃったわ。


「いや、そこまでの性能は、というより色々な性能のものがあってピンキリらしいよ。それこそ最低レベルだと私が日本から持ち込んだバックパックあるよね。容量はあの程度でそれがレジ袋程度になって重さが10分の1になるだけってくらいらしいよ。それくらいだと百万スクルドくらいだって。もちろん高級品だとさっき朝未が言ったような効果があるものもあるらしいけど、普通のハンターじゃ手が出ないってさ」


「え?最低だとバックパックサイズで重量軽減10分の1?いえ、十分に有用だとは思いますけど、それで100万スクルド?費用対効果としては微妙?」

「一般人や商人くらいまでだと荷車のほうが有用だろうね。ただ、ハンターや傭兵だと戦闘があるよね。その時に荷物を降ろす余裕があればいいけど、荷物を背負ったまま戦闘に入ったら容量拡大と重量軽減は随分と効果的だと思うよ。それだけじゃなくて勝てないと判断して逃げるときにも荷物を持って逃げやすいのも利点だろうね」

「ああ、なるほど日常的に荷物を持ったまま戦う人には利点ですね。それでも100万スクルドですか。感じとして1スクルド2円くらいな感じですよね物価的にみて、そうすると200万円の鞄ですね」


あれ?でも日本でもブランドバッグだと結構高いって聞いたことがあるわね。実際に買うとか見る機会なかったので実感ないけど。瑶さんなら分かるかしら。


「そう考えれば高いね。日本でだとブラドバッグも100万円もするものはそんなに見たこと無いしね。まあ世の中色々とんでもないものがあるから知らないところで1000万円のバッグがあっても不思議はないけどね。個人的にはそんなバッグどこで使うんだって思うけど」


瑶さんは、そう言って笑った。


「で、でも、マジックバッグが手に入ればハンターとしての仕事もしやすくなりますよね。今は魔物を狩ってますけど、先日はスリーテールフォックスを狩ってギルドに納品したじゃないですか。ああいう時にも良いんじゃないかって思うんです。もちろん今すぐに買えるなんて思ってません。生活費や装備、頼る人の居ないあたしたちは、いざという時の予備費なんかもしっかりと蓄えないとですし、他にも色々考えて余裕が出来たらというか、そういうものを買えるくらいに頑張ってお仕事しましょう」


あ、あたしったら、何か先走ったわね。瑶さんが何か優しい笑顔だわ。


「こほん。とりあえずはお仕事ですよね。あたしも魔法につぎ込む魔力の調整に大分なれてきましたから色々と応用も出来ると思います」

「ふふ、そうだね。まずは、今請けている仕事をこなそうか」

「はい」


あたしは返事をして休憩の間腰を下ろしていた岩から立ち上がった。

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