第57話 ゴブリン討伐
「瑶と朝未だ。これから討伐に入る」
「ご苦労様です。ご武運を」
あたし達はゴブリンやオークが確認されたエリアのそばでギルドの係員に登録証を見せて討伐エリアに足を踏み入れた。討伐参加の日当があるって聞いてどうやってそれを確認するのかなって思ったのでこれは納得。ついでにちょっと聞いてみようかしら。
「今日は何人くらい入ってるんですか?」
「え、3パーティ16人ですね。あなた方を入れると18人です」
「へえ、結構入ってるんですね。これは獲物の取り合いにならないように気をつけないと。その3パーティはどちらの方向に入っていったか分かりますか」
「最終的には分かりませんが、どのパーティもまっすぐあちらに向かっていましたね」
「ありがとうございます」
あたしは、ちょっと驚きながらも教えてくれた係員にお礼を言って瑶さんの後についていった。
「朝未、他のパーティーは分かるか?」
「うーん、多分近くに行けばわかると思います。でも現状では無理ですね。探知魔法の範囲外です」
「ま、そこは仕方ないか。先行パーティはまっすぐ中心部に向かったみたいだから、とりあえず風下に周って周辺部から探ろう。いきなり中心部に特攻して袋叩きは避けたいからね」
あたしは、頷いて、瑶さんと一緒に風下側に向かうことにしたの。
「瑶さん、ちょっとストップ」
探知魔法を発動したまま小一時間進んだところで探知範囲の隅に気になる反応を感じたので、瑶さんに小声で囁いて止まることにした。
探知魔法も魔力を多めにつぎ込むことで探知範囲を広げたり精度を上げたりできるので、少し落ち着いて探る。とりあえずは一番楽に拡大が出来るウィンドイヤーに魔力をつぎ込む。
「あちらがわ、40メートルから60メートルくらいの間に多分ゴブリンが7体います。探知範囲の関係でそれより向こうは分かりませんが、今のところこちらに気付いている感じはありません。静かに近づいてみましょう」
あたし達は茂みや木立を利用して少しずつ接近したの。
「瑶さん。多分この群れは7体で間違いなさそうです。見えますか?あそこと、あそこ、そして……」
あたしは探知魔法で確認できているゴブリンの位置を瑶さんに指し示した。
「なるほど、隠れ方自体は下手だね。一番近いゴブリンまで20メートルくらいか」
茂みの影から頭だけ出して確認していた瑶さんが、首を引っ込めながら確認できたことを口にしたのよね。
「ふむ、朝未は手前から4体目を狙って先制。そこからは5体目6体目の順番で弓と魔法主体で攻撃をしてくれ、私は、朝未が1体目に攻撃を加えたところで前に出て近い方から対応するよ」
瑶さんの言葉に遠距離攻撃で先制するのは分かるのであたしは頷いて各種補助魔法をあたしと瑶さんに掛け、弓に矢をつがえた。
「朝未のタイミングで良いからね」
あたしはもう一度頷いて、4体目のゴブリンの頭に狙いを付ける。
ゴブリンの動きが止まった一瞬に合わせて射る。
ストンと横を向いていたゴブリンの頭に矢が吸い込まれるように刺さり、そのまましゃがむように倒れた。
と思うと、瑶さんがすごい勢いで飛び出していったわ。
何が起こったのか分かっていないように騒ぐゴブリンが落ち着く前に瑶さんは一番近いゴブリンの首を剣で切り飛ばし、あたしは5体目のゴブリンに矢を射っていた。
5体目のゴブリンにヘッドショットを決めたところで、あたしも前に出る。ここからは魔法で瑶さんを援護するの。
今のあたしの魔法は弓に比べて射程が短い。だから瑶さんの右後ろ5メートルほどから攻撃魔法を撃つの。
「ファイヤーボール」
後方から迫っているゴブリンの胸に初級火属性魔法ファイアーボールをぶつける。さすがに1発では斃れてくれないようね。それでもファイアーボールの爆発でたたらを踏み、熱で火傷を負って動きも鈍っているわね。
「ファイアーボール」
追撃のファイアーボールでその動きの鈍ったゴブリンを沈め、その後続には
「ファイヤアロー」
あ、同じ初級火属性魔法でも単体相手ならこっちの方が効果的なようね。1発で胸に穴が開いて倒せたわ。このあたりは経験ね。
そして後続を倒しきったあたしが瑶さんに目を向けると、ちょうど最後のゴブリンの胸に剣を突き刺し止めを刺しているところだったわ。剣って突き刺す使い方もあるのね。
「朝未、他からは来てないか?」
瑶さんの言葉に慌てて、探知魔法に意識を向けたの。
「大丈夫、あたしの探知範囲には反応ありません」
探知魔法を切らす事こそないけど、探知範囲に相手がいない状態だと意識を向けないとそれを認識できないわね。まだ練習が必要だわ。
「なら討伐証明部位を切り取っていこうか。死体を持ち帰る必要がないのは助かるな」
「ええ、それに野生動物なんかが食べてくれるそうなので死体を埋める必要もないというのも楽ですね」
そしてあたしと瑶さんは手分けをしてゴブリンの討伐証明部位右耳をそぎ落として革袋にしまった。その時
「ぎゃああーー」
誰かの悲鳴が響いたの。
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