第37話 危険エリア
「瑶様、朝未様。おはようございます」
「「おはようございます」」
「おふたりは今日はどうされますか?」
ミーガンさん、また今日もあたしたちに付き合ってくれるつもりなのかしら?行商のお仕事は大丈夫?あたしはそんなことを考えながら瑶さんをチラリと見たの。あら、目があったわ。瑶さんが軽く微笑んで頷いてくれたのでお任せしたらいいわよね。
「そうですね。武器も防具も出来上がってくるのにはまだ時間がかかりますし、この街の事も知りたいと思いますので、私たちは武器防具が揃うのをゆっくりと街の散策でもしながら待とうと思います。幸い当面の資金はありますしね」
これだけの街なら1週間や10日見て回っても多分回り切れないわよね。おしゃれなカフェとかあるのかしら?でも地球と同じなら屋台はともかくレストランとか無いかもしれないわね。地球と同じなら文明レベル的にトレトゥールくらいならあるかしら。ハンターギルドの雰囲気からすると酒場もありそうね。あたしが行くにはちょっと向かない気はするけど。でも、1回くらいは、見るだけなら。瑶さん連れて行ってくれないかしら。あ、年齢的なものでダメとかあるかしらね。
「そういえばおふたりはエルリックに来るの初めてだったんですよね。それでしたら街を見て回るのもいいですね」
ミーガンさんも話がわかるわね。
「それで一応、できればおすすめとか足を踏み入れない方がいい場所とか教えて欲しいんですが」
あ、瑶さんそつないわね。
「そ、そうですね。おふたりの実力からすればどこに行っても大丈夫といえば大丈夫なんですが。わざわざ余計なトラブルの起こりそうなところは避ける方が正解ですね」
ミーガンさんたらあたしをチラリとみてから瑶さんと目を合わせて頷いているわね。
「あたしのせい?」
「い、いえ。朝未様もとてもお強いですが、見た目にはそれが全く分からない、むしろ可愛らしい見た目をしておいでですから。余計な蟲をおびき寄せる可能性もありますからね」
「えと?違法奴隷狩り的な何かとかですか?」
あら?ミーガンさん、苦笑いするだけで答えてくれないわね。でも否定しないってことはそういう事よね。
昨日のハンターギルドで絡んできたのが6級って言っていたから正面からの1対1なら余程まで負けないと思うけど。そう思いながら瑶さんに視線を向けてみたのよね。
「犯罪者が、まともに来るわけがない。大勢で不意打ちされたら無傷でってわけにはいかないだろうし、そもそもそういう場所に行くメリットは無いよ」
まあ、そうよね。あたしだって異世界でそんなリスクをおかすつもりは無いわ。ただちょっと好奇心がうずいただけよ。だから瑶さんに頷いておけばいいわよね。
って、瑶さん何か微笑ましいものを見る目であたしをみなくても良いじゃないの、しかも頭ポンポンとか……。
「うううう。瑶さん、あたしを子ども扱いしすぎだと思うの」
あたしが瑶さんをジト目で見ちゃったのは仕方ないわよね。
「あはは、ごめんごめん。朝未が可愛くてついね」
そ、その可愛いは女性に対する可愛いじゃないわよね。愛玩動物が可愛いというのと同じよね。
「も、もう。瑶さんの意地悪」
「はあ、仲が良いのは良いですが。とりあえず、北門の外側には近寄らないようにするのが良いです。あそこがこの街では一番危ないですから」
「危ないというと、スラムか何かですか?」
「ええ、しかも単なるスラムではなく、ハンターや傭兵が身を持ち崩して落ちた連中の多い場所なんです。単に貧困というならおふたりなら簡単に蹴散らせるでしょうが、ある程度の戦闘力のある連中がいます。それがそれなりの人数なので厄介なんです」
「それは面倒な場所ですね」
「瑶さん。見に行っても楽しくはなさそうだし、行かなくてもいいよ」
「そうだね。その辺りには近づかないようにしよう」
そんなあたしと瑶さんのやり取りにミーガンさんがホッとした表情を見せたわ。よほど避けて欲しかったのね。
「それが良いでしょう。まあ門から出なければ余程まで大丈夫ですが、そういった経緯でどうしても北門付近は荒っぽい連中が多いのを覚えておいてください。まあ門の内側ならいきなり襲われることはあまりありません」
あ、それでも”あまり無い”ってくらいなのね。
「それにそういう場所でもあるので領兵の巡回も他より頻繁です。門を出なければまあそれなりに安全ですよ」
それはそうよね、領都内であまり危険なエリアがあったらまずいのはわかるわ。
「近づかないほうが良い危険なエリアは、そこくらいですけどね。他はまあ”普通の”女性のひとり歩きは避けた方がいい。程度までですから。おふたりなら問題ないと思います」
その”普通の女性”という言い方に少し引っかかりはあるけど、あたしの場合瑶さんが一緒だから大丈夫ってことにしておくわ。あたしならひとり歩きオーケーと言われても多分あたしにダメージくるやつよね。
「この領都エルリックはほぼ円形の防護壁で囲まれていますが、内側はいくつかのエリアに分かれています。中央にあるのが領主様のお屋敷を含む行政区。その周囲が富裕層の方々の住む高級住宅地です。まあ普通の方はあまり用事の無い区画ですね。そして南側の区画が……」
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