第2話
誰もいない機械に囲まれた部屋で野崎あきらは一人パソコンに向き合う。画面には文字が浮かぶ。
「ダイジョウブ?」
「大丈夫だよ。いつもごめんね」
彼女はネットの中で生きていた。部屋に閉じこもる彼女に現実の世界は見向きもしない。もう3年になるだろうか。最初は両親もこのままじゃダメだと何とか部屋から出てこないかと試行錯誤していた。しかし、それも最初だけ。いつしか彼女は居ないものとして扱われていた。ご近所付き合いの浅い都会の街ではもう彼女は存在していなかった。
「ナラヨカッタ。モウネルネ。ダイスキダヨ」
だからこそネットに依存し、愛を求めていたのである。名前も顔もどこに住んでるのかさえ知らない他人が今の彼女にとっては無くなってはならない大切なものだったのである。
「わかった。おやすみ。私も大好きだよ」
最後の文字を打つと画面の明かりを消し私も布団に潜る。毎日これの繰り返しだった。別にこの生活に不満もない。誰にも必要とされない私にとって唯一生きている証であり、理由であるからだ。
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