第8話 のどかな初夏の1日

一人目の相談者から約半年弱を過ぎようとしている頃。

その後の八百万には相談者が訪れなかった。

この者ズバリ、やる気がさほど見受けられず、看板を掲げようとも、それで銭の催促をする訳でもないので、

何事もなかったかの様に腑抜ふぬけた日々を送っていた。

田んぼのあぜに座り、たんぽぽの茎をやぶき取って、草笛を作ってと吹き鳴らし、ポロッと言葉をこぼした。

「平和じゃのぉ〜。」

「空は青いし、田の中の稲はわり、蛙はゲコゲコと鳴き出し、稲をかき分け水面を颯爽さっそうと吹くそよ風は気持ちよく。」

「相談者は今の所1件のみ。」

「みな悩みなき人生、最高に謳歌じゃ。」

この男、基本的に少し足りない。

看板が問題ないのか?それとも、前回の人生相談の対応がイマイチだったのかなどと、

反省したり、心配したりと今自分に対して

起きていること以外は、何も問題なしと、安易に捉える。

田んぼのあぜで、長閑のどかな小一時間を過ごしたら、

「たまには街を歩いてみるかなぁ〜。」と、

買い物に出かけることにしたようだ。

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