この意味深な光画に導きを!
バニルの弟子:ショーヘイ
プロローグ
ギルドの酒場にて。
「――カズマさん、カズマさん。皆で写真を撮りましょう!」
「あのな、この世界のカメラってレンタルするだけでもすげー高いんだぞ。そんな物、ホイホイ借りれる訳ないだろう」
「いいじゃない別に、なにせ今日は私の誕生日なんだから! この記念すべき特別な日を写真に収めておきたいのよ」
ほろ酔い状態のアクアはそう言って、期待の眼を向けてきた。
「まあ良いではないか。思い出を形に残すというのも悪くないと思うぞ」
「逆にこれまでそう言う事をしてきませんでしたしね。いい機会だと思いますよ」
余計な事を言い出すダクネスとめぐみん。
「はあー。……今日だけだからな」
「やった! さっすがカズマさん、成金冒険者の名は伊達じゃないわね!」
「喧嘩売ってんのか?」
思わず言い返したが、にへらっと機嫌良さげに笑うアクアに毒気を抜かれ、俺は苦笑いを浮かべた――
俺がカメラを借りて戻って来た後、どうせならとギルドにいる連中全員で記念写真を取ることになり。
「それじゃあ撮るぞー。お前ら、一か所に集まってくれ」
「何を言っているのですか、カズマも一緒に写るんですよ」
「別にいいよ俺は。写真撮られるのってあんまり好きじゃないし」
「っ! なるほど、お前は一人だけ仲間外れにされる疎外感を味わいたいんだな! あぁ、やっとカズマも目覚めてくれたのか!」
「俺にMっ気があるみたいな言い方は止めろ」
ウィズの店あたりに、副作用で性癖が変わる魔道具でもないかな。
「ごちゃごちゃ言ってないでほら、カメラは受付のお姉さんにでも渡してカズマも早くこっちに来なさいな。このアクアさんの隣を特別に開けといてあげてるわよ」
こちらの都合など一切考慮しない相変わらずのアクアにイラっときた。
でも今日の主役はこいつだ、こんな日ぐらいは大目に見てやろう。
俺が手招きしていたアクアの隣に立ったのを見計らい、お姉さんがカメラを構えた。
「皆さん準備は良いですか? では、3,2,1で撮りますね」
それを合図に皆がカメラに視線を向ける。
お姉さんのカウントが始まってもガヤガヤと周りの連中が騒がしい中で。
「カズマ!」
不意の呼びかけに隣を見ると、アクアは心からの笑みを浮かべて、
「これからもよろしくね!」
――カシャッ!
ちょっとした特別な日を切り抜いた、どこにでもあるような一枚の写真。
それがまさかあんな事実に繋がるとは、この時この場にいる誰もが想像していなかった事だろう――
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