対戦

僕は足を早めた。

「白玉!!廃ビルはこっちで合ってる!?」

「あぁ!!このまま真っ直ぐだ!!」

「了解!!」

体力は消耗しているはずなのに全然体が疲れていない。

「ッ!夜空止まれ!」

白玉の声に驚き僕は足を止めた。

「どうしたの?」

僕がそう言うと白玉は来ていた上着を脱ぎ僕の前方に投げた。

すると地面に落ちそうな上着が黒い影に覆われた飲み込まれた。

「な、何だ!?」

「夜空…よく見てみろ。」

地面をよく見てみると地面一面の黒い影が沸騰していた。

「何だコレ!?」

「ガイの作った罠だろうな。」

「どうしよう…。」

白玉が僕の手の甲を見て驚いた。

「よ、夜空…手の甲見て見ろ。」

「ん?」

白玉に言われて手の甲を見た。

十字架の刻印が変色していた。

黒と薄い水色のグラデーションになっていた。

「色が変色してる!?」

「もしかして…。夜空、手を前に出して見ろ。あの黒い影に向かってな。」

「え?う、うん。」

黒い影に向かって手を出した。

すると手の平から氷が出て来た。

「これって!?星の氷!?」

「星の力がお前に宿ったんだな。」

「星の力…。」

星の力が僕の中に流れているんだ…。

「星…借りるね。」

僕は地面に手の平を付けた。

触って居る部分から地面が凍って行き黒い影の塊を凍らせた。

「おおお…。これで通れるかな?」

「行くぞ。」

「OK。」

僕の作った氷の道を通り再び廃ビルに向かった。

しばらく歩いて居ると廃ビルが見えた。

コンクリートの建物は苔が生え色んな所から草が生えていた。

「まさか星までヤられるとは思わなかったよね。」

上を見上げると屋上からガイが僕達を見下ろしていた。

「ガイ!!」

「ボクの思い描いてた展開じゃないけど。まぁいいか♪」

ガイは物凄いスピードで僕達の目の前に現れた。

「「!!?」」

いつの間に降りて来たんだ!?

「ボクの邪魔をした罰は受けて貰わないとね♪」

ガイが指を鳴らすとガイの影から数体化け物が出て来た。

今まで戦って来た化け物とは違う。

「さぁ、楽しい殺し合いの始まりだ。」

「キュイイイイイイイイン!!!」

化け物が僕達に向かって来た。

僕は素早く鎌を取り出そうとした。

その時だった。

パァァァン!!!!

銃弾の音が鳴り響いた。

「ナイスタイミングだな。」

振り返るとそこに居たのは。

「皆んな!!!」

「遅いじゃないか。」

銃を持っている闇、それに百合と空蛾が居た。

闇が銃を持ってるって事は…。

皆んなも僕と同じように愛する人の力を使えるって事だよね。

「化け物は任せとけ。夜空はガイに専念しろ。」

「百合…。」

「ギィィィィァァァア!!!!」

化け物の体が炎に包まれた。

「夜空の役目があるでしょ。あたし達に任せて。」

空蛾の手から炎が出ていた。

そうだ。

僕の役目は杖を奪う事。

そして嘘の情報を流す。

「ガイ。お前の夢は叶わないよ。」

「何言ってるのかなぁ?」

ガイはそう言って杖を取り出し炎の弾を作り出して僕に飛ばした。

僕は手を広げ火の弾を凍らし、棘を操りガイの体を拘束しようとした。

「ボクを捕まえるのは無理だよ♪」

ガイは器用に炎を操り棘を燃やした。

見えない動きで炎の狼を作り出し僕に飛ばした。

「夜空!!」

「おっと…邪魔はさせねぇよ。」

ガイは杖を白玉に向け赤い鎖を白玉に向かって放った。

「白玉!!!」

「ッ!?」

僕は白玉の方に向かおうとしたが僕は狼を相手にしていた。

パンパンパンッ!!!

「っと危なかったな白玉。」

「百合!!」

闇が鎖を弾き飛ばすように銃弾を放ち、百合が白玉をお姫様抱っこしていた。

百合の体が緑色の稲妻に覆われていた。

僕達の場所から百合の場所は距離があったはずなのに…

「どうやってここまで!?」

「この稲妻を纏ってると足が速くなるんだよ。間に合って良かったわ。」

「ほ、ほぇぇ…。」

「白玉はこっちに置いとくから安心しろ。」

「ありがとー!!」

白玉は百合の側に居るから安心だな。

僕は炎の狼を凍らせガイに向けて氷を放った。

ガイは杖から炎を出し氷を溶かした。

僕はガイの背後に周り鎌を振った。

キィィィン!

ガイが鎌の刃を赤い剣で止めていた。

「いつの間に出したんだよ!?」

「そんなの教える訳無いじゃん♪」

僕は鎌を振るい続けた。

「あははは!やっぱり星のお気に入りは面白いね!!中々やるよ。」

「そりゃどうも。」

「だけどボクを倒す事は出来ないよ。」

そんな事分かってる。

そろそろ仕掛けてみるか…。

「お前の望みは何だよ!?」

僕はガイに棘を飛ばしながら問い掛けた。

「世界の仕組みを変えるためさ!!ボクの思いのままの世界を作り上げる為にね!!」

ガイは棘を避けようとせずに僕に向かって来た。

振りかざされた剣を鎌で止める。

「自分の事しか考えてないんだな。」

そう言うとガイの眉毛がピクッと動いた。

「はぁ?」

「お前はお姫様の事考えた事あんの?」

「お前、姫の事知ってんの?」

空気がピリッと張り詰めた。

ガイの地雷を踏んだようだ。

「青藍から話を聞いたよ。ガイがお姫様の事を凄く好きだったって事を。だけどガイがお姫様を殺したんだろ?」

そう言うとガイの体から黒いオーラが纏い出した。

「ボクが姫を殺した?有り得ない!!ボクは姫を生き返らせるんだよ!!!この杖があれば出来るんだ!!!」

僕はガイの顔をジッと見つめた。

「何だよその顔…。」

「お姫様は生き返らないよ。」

「何言ってるの?」

「ガイがその杖を奪った時に姫は死んだんだよ。」

「嘘…だろ?」

「お姫様の命をガイが奪ったんだ。その杖はお姫様の命そのままなんだよ。だから…」

「嘘だ…嘘だ!!!」

ガイが叫ぶとガイの影から泥っとした狼が沢山出て来た。

「夜空!!!」

「白玉!!皆んなも!!!」

白玉達が僕の側に駆け寄って来た。

「おいおい…これやばいんじゃないの?」

闇が頭を掻きながら呟いた。

「僕の行った事を信じたみたいだよ。」

4人にしか聞こえない声で呟いた。

「作戦は成功したんだな。」

百合の問いに僕は頷いた。

「なら後は…。」

そう言って空蛾は鎌を取り出した。

「ガイから杖を奪うだけね。」

「皆んな…力を貸して欲しい!!」

僕がそう言うと皆んな静かに鎌を構えた。

「お前等を許さない!!!」

ガイが大声で叫びを上げた。

最終決戦開幕の雄叫びだった。



第六章   完

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