雨の降り頻る中で

晃side


朝、目が覚めると雨が降っていた。

雨の匂いが鼻に届く。

「夜空、起きたか。」

着替えを済ませた白玉が僕に声を掛けた。

「おはよう白玉。」

「おはよう。今日はリビングに待機していた方が良さそうだな。」

白玉は窓の外を見て呟いた。

「そろそろ…行こっか。」

僕は上着を羽織りドアノブを捻った。

いつもの空気とは違って重たく感じた。

リビングに着くともう既に3人は集まっていた。

緊張感が張り詰めていた。

「おはよう。」

僕は3人に挨拶をした。

「おはよう2人とも。」

「おはようー。」

「おはよう。」

皆んな顔がやつれてるな…。

チロリロリン♪

チロリロリン♪

「「「「!!!?」」」」

僕は慌てて手鏡をポケットから取り出した。

謎の音楽は手鏡から流れていた。

他の3人の手鏡からも流れていた。

「4人とも手鏡を開いてみろ。」

白玉に言われて手鏡を開いた。

「星!!?」

鏡に星の姿が映っていた。

「麦の姿が映ってる…!」

闇は手鏡を見て驚いていた。

「本当に恭弥が映るのね…。」

ガタッ!!!

百合が真っ青な顔をして立ち上がった。

「ゆ、百合?ど、どうしたの!?」

僕の話を聞かずにリビングを出て行ってしまった。

もしかして裕二さんに何かあったのか?

「夜空、空蛾、闇。」

白玉が僕達を呼んだ。

「作戦開始だ。皆、それぞれ手鏡を頼りに向かって欲しい。百合は先に出て行ってしまったが、まぁ問題無いだろう。」

「じゃあ俺、先に行くわ。」

そう言って闇は足速にリビングを出て行った。

空蛾も立ち上がり、闇に続いて出て行った。

「夜空。」

白玉が僕を真っ直ぐ見て来た。

僕は星を殺しに行く。

星を助ける為に。

「行こう白玉。」

僕はリビングを出て重たいドアノブを押し屋敷を出た。

ザァァァァァ

大粒の雨が地面を叩き付ける。

僕達は傘も差さずに手鏡を見ながら道を歩いていた。

ドキドキドキドキ…

心臓が脈を打ち過ぎて痛かった。

星と僕の距離がだんだんと近付く。

あと、100メートル。

あと、50メートル。

僕は足を止めた。

心配そうに僕を見つめる白玉。

僕の視線の方に目を向ける。

そこに居たのは…。

「まさかこんな所で会うなんてなぁ?晃。」

マントフードを取り僕に顔を見せる。

「久しぶりだね星。」

星が右手を軽く挙げた。

すると星の手から沢山の氷が出て僕達の方に向かって来た。

「白玉危ない!」

トンッ

僕は白玉を軽く横に押した。

「夜空!」

僕と白玉の間に氷の壁が立ちはだかり、周りを見ると氷の壁が周りに作られていた。

僕と星だけを囲んだ氷の空間だった。

そして星は自分の手から鎌を出した。

「邪魔者は居なくなったし、心置きなく戦えるな晃。」

「星、僕はお前を殺すよ。」

僕も鎌を出し星に刃を向けた。

「この間と顔付きが違うなぁ。いいぜ?殺し合おうよ。」

星も僕に刃を向けた。

沈黙が暫く続いた。

僕は静かに息を整える。

「……。」

「……。」

僕は星に向かって走り出し、鎌を振り上げた。

キィーンッ!!

鎌の刃と刃が打つかり合う。

星が手の平を広げ氷の刃を作り出し僕に向かって飛ばして来た。

僕も棘を出し氷の刃に巻き付け方向をずらした。

「あははは!!やっぱりお前と戦うと楽しいよ!」

星が大声を上げて笑い出した。

「星…。僕は楽しくないよ。」

「何で?」

「星と戦いたくないよ。」

「俺はお前と戦えて楽しいよ!!」

そう言って僕に鎌を振り上げた。

「ッ!?」

僕は隙を突かれて攻撃を貰ってしまった。

致命傷にはならなかったが左腕と左足を擦ってしまった。

「ボサッとしてんなよ!!」

容赦なく僕に向かって氷の刃が向かって来た。

僕は鎌を大きく振り上げ、氷の刃を弾き飛ばした。

「ッッ!!」

星の体に何本かの氷の刃が体に刺さって居た。

「やっと戦いらしくなったな!!晃!!」

そう言って体に刺さた氷を抜いていた。

星の下に血が滴っていた。

僕の下にも同じ状態になっていた。

こんな状態なのに星は笑っていた。

そんな星を見て僕は怒りが湧いた。

「本当の星を返してよ!!」

「ッ!?」

僕がそう言うと星が右胸を押さえて蹲った。

「どうしたの?!」

僕は慌てて星に近寄った。

右胸の欠片がキラキラと輝いていた。

「ッペッ!!クッソ…こんな時まで邪魔するのか…。」

星が血を吐き捨てていた。

「大丈夫?」

僕は星の背中を摩った。

「ッ!触るな!!」

「ヴッ!!」

思いっきり右頬を殴られ、息良い良く後ろに倒れてしまった。

口の中に鉄の味が広がった。

頬を押さえながら星を見つめた。

「俺なんかの為に自殺なんてするなよ…晃。」

星は今にも泣きそうな顔をしていた。

本当の星が僕に語りかけて居るような気がした。

星は1人で今も戦い続けている。

僕を付け離すような言葉に聞こえた。

「俺なんか…って何だよ!!親友なんだから助けに行くのは当たり前だろ!」

そう言って星の左頬を殴った。

「ッ!?」

そのまま星に跨り胸ぐらを掴んだ。

「僕は僕の為に此処に来たんだ!!星を…。星を助ける事が僕がこの世界で生きる意味なんだよ!!星の痛みを一緒に背負って行く覚悟は昔から出来てんだよ!!」

僕は星に怒鳴り付けた。

星の顔を見ると今にも泣きだきそうな顔をした。

「俺の為に命を捨てるような事をして欲しく無かったんだよ…。晃が俺の為なら何でもやるって分かってた…。俺がピンチの時にはいつも助けに来てくれる晃は俺にとってヒーローなんだよ。俺はお前が思ってる程強くないよ。」

「星…。」

雨の降り頻る中で僕達の想いが交錯する。

雨音と共に星の瞳から涙が零れ落ちた。

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