作戦

「お前等の拠点としてる廃ビルは何処にあるんだ?」

青藍が裕二さんを見つめた。

「んーっとな確か…。赤い屋敷の近くだよ。」

「雫の屋敷の近くって事か…。」

青藍は右手を顎に添えて考え込んだ。

「俺は雫を目覚めさせる。」

「「「「!?」」」」」

僕達は青藍の言葉に驚いた。

「お姫様を目覚めさして大丈夫なの?」

「ガイを止めれるのは雫だけだ。ガイは雫が死んだと思い込んでいる。」

「もしかして、ガイがお姫様の杖を奪ったから?」

僕が青藍に問いかけると青藍は頷いた。

「雫の残りの力がガイの持っている杖に宿っている。それを奪ったんだから雫は死んだと思い込んでいる。だからこそ、それを俺等は利用する。」

「どうやって?」

百合が青藍に尋ねた。

「作戦はこうだ。雫を生き返らないと嘘の情報をガイに伝える。」

「もしかして…ガイはあの杖を使えば雫が生き返ると思っているのか?」

闇が青藍に尋ねた。

「その通りだ。ガイはあの杖を使えばこの世界の仕組みを変えれるし雫の事も生き返らせれると思っている。そしてガイに嘘の情報を流し油断させる。一瞬の隙を突いてガイから杖を奪う。」

「成る程…。第一優先が杖を奪う事か。そして俺等の中からガイと戦う相手を決めるって事だな。」

青藍の言葉を聞いて百合は考え込んだ。

すると僕の隣に居た闇が口を開いた。

「アイツ確か夜空の事を知っていたよな?」

「「「!!!!」」」

闇の言葉に僕達は驚いた。

「確かに奇襲の時にガイは夜空に用事があるって言っていたよね?」

空蛾が僕に尋ねた。

「うん。きっと星が僕の話をガイにしていたんだと思う。だからガイは僕の事を知っている。」

「だったら夜空の言葉の方が俺等より信用性はあるんじゃねぇの?」

闇がそう言うと青藍が口を開いた。

「確かに。夜空以外の3人はガイは全く知らない人と言っても過言では無い。白玉の事をガイは毛嫌いしてるし、白玉にガイの相手を頼んだとしてもガイは警戒しまくって隙すら作らないだろう。だからこそ。」

そう言って青藍は僕を見つめた。

「夜空に頼みたい。」

「!!」

「あたしも夜空が適任だと思う。」

「空蛾…。」

空蛾も僕を信頼してこう言ってくれている。

「俺は…無理にガイの相手をさせるつもりは無い。」

「闇…。」

闇は僕の事を考えて言ってくれているんだと分かった。

本当に闇は優しい人だと思った。

「俺も夜空の意見を尊重する。」

「百合…。」

百合も僕の事を考えてこう言ってくれている。

「夜空。」

白玉が僕の手を握った。

青藍の話を聞くまではガイはただの頭の可笑しい奴だと思っていた。

だけと本当は誰よりも優しい心を持っていて、お姫様を誰よりも好きでいた。

ガイを止めてあげれるのはお姫様だけだ。

「分かった。ガイは僕が担当するよ。」

「ちょっと待って。」

裕二さんが話を止めた。

「何だ?裕二。」

「夜空がガイを担当するのに異論は無いよ。だけとさ?従者達はどうするんだ?星は誰が相手するんだ?」

「あ、そうじゃん!!僕が星の相手をしてたらガイの相手出来ないよ?」

僕と裕二さんは青藍を見つめた。

「廃ビルに突入する前に従者達と戦ってもらう。」

「「「!!!」」」

「そう言う事か。和希達に俺等と先に戦って、その後に突入するって事だな?」

「その通りた。」

僕達が驚いている中で裕二さんと青藍は話を進めていた。

「裕二に、白玉がガイの拠点としている廃ビルを探していると嘘の情報をガイに流して貰う。」

「何故妾の名前なんだ?」

白玉が青藍に尋ねた。

「ガイが白玉を毛嫌いしているって言ったよな?白玉が思っている以上にガイは白玉を嫌っていると同時に警戒している。禁忌の種を壊し続けたからな。それが今は都合が良い。」

「都合が良いって?」

僕は青藍に問いかけた。

「そうやって言えば従者達を見回りに出す。そしてガイは廃ビルから動かない。何故なら白玉が俺の従者だから。俺が指示をして白玉に探させていると思うからな。」

「俺等を見回りに出す可能性が高いな。どうやって和希達に居場所を伝えるんだ?」

裕二さんがそう言うと青藍は小さな虫の形をしたガラスを4つ机の上に置いた。

「これは…?」

僕は青藍に尋ねた。

「GPSみたいな物だ。これをガイの従者達の服の何処かに付けて欲しい。」

「了解した。」

そう言って裕二さんはGPSをポケットにしまった。

「お前等も一個ずつ持ってろ。」

青藍は手鏡を4つポケットから取り出し僕達に渡して来た。

「GPSが発動したら鏡に相手の居場所が反射して映るようになっている。」

「向こうが動き出したらすぐ分かるようになってんだな。」

手鏡を弄りながら百合が呟いた。

「そう言う事だ。早くて動き出すとしたら明日ぐらいか。」

「白玉ちゃんだっけ?その子をガイが警戒しているならそのぐらいだと思うな。」

「ガイの側に居る裕二がそう言うなら間違いないな。頼むぞ。」

「了解した。なら早速俺は戻った方が良さそうだな。」

青藍との会話を済ませた裕二さんは席を立った。

「百合達はいつでも行動できるように待機しといてくれ。」

そう言って裕二さんは玄関に向かって行った。

「裕二!!」

裕二さんの後を百合が追いかけて行った。

「ん?どうした?」

「気をつけろよ。」

「分かってるよ。じゃあな。」

玄関の閉じる音がした。

百合も裕二さんの事を心配しているんだろう。

それも当然だ。

百合の大事な友達なんだから。

心配だよな…。

「俺も今から森に向かう。お前等は明日に備えて早く寝とけ。いいな。」

青藍はそう言って屋敷を出て行った。

「あたしはもう休むわ。ちょっと1人になって考えたいの。」

「分かったよ。お休み空蛾。」

「お休み。」

僕にそう言って空蛾は部屋に戻って行った。

「俺も戻るわ。また明日此処で。」

闇も部屋に戻って行った。

「夜空と白玉も今日は疲れただろ?部屋で休んどけ。明日はきっと気が滅入る事が多いと思うから。」

「百合は休まないのか?」

白玉が百合に尋ねた。

「俺はもうちょい此処に居るよ。ちゃんと休むから安心して。」

百合の顔は何処か悲しげだった。

きっと皆んな1人になりたいんだ。

「分かった。お休み百合。」

「お休み。」

僕は白玉の手を引きリビングを後にした。

いよいよ始まる。

大切な人を助ける為に大切な人を殺す日がー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る