第六章 悲哀の物語の末に


作戦会議始動


「百合、裕二って奴と3日後に会うんだよな?」

そう言って青藍は百合を見つめた。

「その予定だ。」

「なら、ソイツと会ったらこの屋敷に連れて来い。」

「え!?い、良いの?」

僕は驚いて質問をしてしまった。

一応ガイの従者な訳だし…。

敵を自分の屋敷に入れていいのか?

「百合が信頼してる相手だ。ガイに殺されるかもしれないのに百合と会う約束をしないだろ?」

「あ!確かに!」

青藍の説明で僕は理解した。

「分かった。3日後に本格的に作戦を練ろう。」

百合の言葉で今日の集まりは終了した。

そしてあっという間に3日後になった。

僕以外の3人は小瓶の中身が埋まる程の欠片が集まっていた。

僕の小瓶も大分埋まり、あと一個で小瓶は埋まる。

星から欠片を奪えば小瓶の中身は埋まる。

いよいよ始まろうとしている。

僕達とガイが戦う日が近付いていた。

僕は白玉と欠片を集めていた帰りに屋敷の前で百合と鉢合わせた。

「あ、百合!!」

「夜空と白玉か。」

「今から向かうのか?」

白玉が百合に尋ねた。

「あぁ。すぐに帰るから皆んなリビングに集まっといてくれ。」

百合はそう言って住宅地に向かって行った。

「夜空、妾達も屋敷の中に入ろう。」

「分かった。」

僕と白玉は百合を見送り屋敷の中に入った。

僕達は皆んなが揃うのをリビングで待っていた。

「あれ?夜空と白玉が一番乗りか。」

「闇!お疲れ様!」

闇がリビングの入り口から顔を出していた。

身なりがボロボロになっていた。

闇も欠片集めをしていたのだろう。

「お疲れさん。今日だったな百合の連れが来るの。」

「そうだね…。緊張して来たよ僕…。」

「大丈夫だろ。百合が信頼して此処に連れてくるんだ。」

「そうだよね…。百合が信用してる相手だし。」

僕がそう言うと闇は僕の隣に腰掛けた。

「今日は俺がお前の隣に座っとくわ。」

闇は気を使って僕の隣に座ってくれたんだな…。

「闇って優しいよね。」

「はぁ!?お、俺は別に優しくねぇよ。」

僕がそう言うと闇は照れてしまった。

「後は百合と青藍だけなんだ。」

空蛾がキッチンンからティーセットを持ってリビングにやって来た。

「あ、空蛾。百合は裕二さんを迎えに行ったよ。」

ガチャッ

玄関の開く音がした。

「皆んな揃ってるか?」

百合の声が玄関からした。

「青藍がまだだ。」

百合の問いに白玉が答える。

「すげー!!豪邸だな和希!!」

「うるさいぞ裕二。」

リビングの入り口を見渡す1人の男性が見えた。

どうやらこの人が裕二さんらしい。

百合と同い歳には失礼だけど思えなかった。

百合の顔立ちより幼く見えた。

「ほら、一応名前を名乗っとけ。」

百合が裕二さんの背中を軽く叩く。

「あ!そっか!名前知らないと不便だもんな。」

裕二さんは軽く咳払いをし、一歩前に出た。

「俺の名前は櫻葉裕二。百合の同僚だ。今日の作戦会議に参加されて貰うな。」

ニコッと優しい微笑みを僕達に掛けてくれた。

「宜しくお願いします!!」

僕は勢い良く答えてしまった。

「元気が良いなってもしかして君が晃君?」

裕二さんは僕に近寄った。

何でこの人僕の名前を知ってるんだろ…?

「そうですけど…。」

「あ!やっぱり?」

「夜空の事知ってんの?何で?」

闇が話に割って入って来てくれた。

「あ!警戒しなくて大丈夫だよ!実は晃君…じゃなかったな。夜空だったな?星が寝言で泣きながら君の名前を言ってたんだ。’’晃''って。」

「え!?し、星が…?」

僕がそう言うと裕二さんが静かに頷いた。

「君の事大事に思ってるんだな星は。星は戦ってるよ。」

「戦ってるって…。もしかしてもう1人の自分と?」

僕がそう言うと裕二さんは右胸が見えるように首元を下に引っ張った。

右胸が薄くなっていて欠片のハートが見えた。

「星の本体の欠片が抵抗してるんだ。夜空を守る為に作られた人格の星と戦っている。」

「星…。」

「他の2人の人もそうだよ。」

「「!?」」

裕二さんの言葉に2人は驚いていた。

「麦が苦しい思いしてんのか!?」

闇が裕二さんに詰め寄った。

「ほとんどは寝たきりで過ごして居る。欠片のハートが痛くて起きれないんだ。」

「早く助けに行かないと!!」

裕二さんが闇の肩に優しく触れた。

「その話し合いをする為に俺等は集まったんだ。恭弥さんも君の事を大切に思ってる。あの奇襲の時だって本当は君と戦いたくなかったんだよ。」

「恭弥…。」

「お、揃ってんな。」

青藍がいつの間にかリビングの入り口に立っていた。

「青藍いつの間に帰って来たんだよ!?」

「お前等が気付いて無かっただけだろ?ほら百合達もさっさと椅子に座れ。」

青藍の声掛けで百合と裕二さんは僕達の正面に腰を下ろした。

「よし、これで皆んな揃ったな。」

皆んな一斉に青藍の方向を見つめた。

「これより、作戦会議を始める。」

ガイを止める為の作戦会議が始動した。

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