ひとり
@kamometarou
ひとり
みんなが私を追い越していく
陽が沈むなか肩を並べて
ともに帰路を行く君の背中が
いまはなぜだかとても遠くに
鞄に付いたかえるの人形
静かな路に響く君の声
オレンジに染まったその横顔も
いまはなぜだか崩れて消えてく
朝日が登って夕日が沈む
月が登って朝霧が掛かる
私は一日動けないまま
太陽と月が追いかけあった
開け放った窓にそよ風が吹く
冷たい朝の湿った空気が
私の鼻に入っては消える
あの頃の私も現れは消え
虚ろな朝に下を向きながら
少し早足で学校へ行く
花壇のビオラと雀の鳴き声
遠くで揺れる白い情景
教室へ入れば高い笑い声
君のグレーのキュロットが揺れる
冗談を言ってふざけ合う男子
けれど私はもうそこにいない
みんなが私を追い越していく
みんなの笑顔が私を嘲る
海の底から沸々と湧いた
嫉妬の泡が弾けて鳴った
どうか私を憐れまないで
可哀想などと同情しないで
どうか私を蔑まないで
眩しい笑顔で見下さないで
神様どうか私を助けて
私をひとり置いていかないで
ひとり @kamometarou
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