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「ご子息はどの部隊でした?」
「第百十六師団の第九十二工兵連隊でした。伍長まで務めさせていただきましたよ」
続いて奥方が、すこし詰まり気味に話し出す。
「優しい子でしたよ、軍隊なんかで務まるのかと兵隊にとられた時は心配するほどの、でも向うでも誰にでも優しかったみたいで、一度私共の店に息子の部下だったって方が訪ねておいでになりしてね。古参兵の苛めから庇ってもらったりして大変よくして頂いたと、その方の故郷の名産だって、立派な毛織のじゅうたんを頂きました」
第百十六師団の叢林防衛戦は今でも全軍の語り草だ。
皇紀八二九年の雨月。同盟は百万もの圧倒的兵力をぶち込んだ『諸国人民の怒り』作戦とか名付けた電撃戦で、国境線の街、沿岸の泰明と内陸の叢林を瞬く間に包囲下に置いた。
泰明の方はは制海権を掌握していた帝国軍海軍が、連日連夜の艦砲射撃と海上輸送で敵を退け続けた街を守り抜いたが、問題は内陸の叢林だ。
当初は不意を喰らい、中急遽編成され練度の低かった叢林を守る第百十六師団は、易々と包囲され孤立させられた。
それでも、崔翠河の水路と空路を利用した物資補給と師団長の卓越した作戦指揮、そして誰も予想していなかった頑強な粘り強さで、一年と三ヶ月にもおよぶ攻防戦を戦い抜き、ついに街を守り切った。
(街が守られた理由は第百十六師団が頑張っただけでは無いってのが最近の専らの評価だ、同盟の欲ボケ共は、戦争に勝った後そっくりそのまま街を利用できるように叢林の市街地や港湾施設を攻撃しなかったのだ。そこを我が軍に付け込まれたってワケ、欲をかきすぎるのは良くないねぇ)
百五十万もの兵力を投入し展開された帝国軍の一大反攻作戦『
全滅寸前の損耗率だ。机上演習なら負けの判定を喰らうだろう。だが、彼らは勝った。とてつもない犠牲を払って。
「戦死公報は頂戴したんですが、遺骨はまだ戻って来てません。復員した人から聞くと激戦地だったんで多分共同墓地に葬られたんじゃないかと・・・・・・」
と、ご主人。
全球大戦での平均的な戦死者の状況だ。まだ埋めてもらえるだけましかもしれねぇ、軍艦の搭乗員は沈めば海の藻屑、飛行艦や航空機なら空に散華。どこを拝みゃいいかわかりゃしねぇ。
ほとほと左様に戦争での人の死に方って言うのは、まともな死に方とは言えねぇな。
西塞駅を出発して十時間、朝六時。
同乗者の夫婦は朝の風景を見に行くと客室を出て行った。
留守番に残った俺とシスル。
白々と明け始めた車窓の向こうをぼんやりと眺めながら、シスルは誰に言うと無くつぶやいた。
「息子がどこに葬られた解らないって、あの二人、可哀想だな。まだ
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