どーしよ。〜運がない俺の成り上がり〜
SS
第1話 幸運なのか不幸なのか…。
黒沢雄太16歳。俺の人生はつくづくついてないと思う。そして今、そんな人生に終止符を打とうと、足を踏み出した。
俺には幼なじみが2人いる。1人は、浅井大智。一言で言えば、みんなの理想の人物だ。運動神経抜群で、校内テストでは常に1桁をキープ。とても優しくて明るい。おまけにイケメンだ。彼のスペックについて聞くと、10人中10人ともイケメンと言うだろう。
もう1人は佐々木美香。運動神経はそこまで良くないが、校内テストでは当然のように毎回1位をとる。この前は全国模試で27位を取っていた化け物だ。めちゃくちゃ頭が切れる。これまた大智に並ぶほどのスペックを持っており、連日告白の嵐だとか…。
2人とも県内トップの高校に入り、それなりに活躍しているそうだ。2人から直接聞く訳ではないが、母親同士は仲が良いため、よくご飯の時に聞かされる。
片や俺はと言うと、近所の進学校で、成績は中の上。運動神経は良くも悪くもない。まぁ、何処にでも居る普通の生徒だ。強いて特徴を挙げるなら、現時点でそれなりに稼ぎがあることくらいだと思う。一応作家であり、本を出版している。ついこの間も「世界一強い猫は人間になりたい様です。」と言う本の売り上げが、自己最高記録で120万を突破した。うん、なんともありがたいことだ。ファンのみんなには感謝しかないぜ!
っと、そうだ。今から中学のクラス会があるんだった。俺はあまり乗り気じゃないが、中学で出会った親友、たっくんこと野々山拓馬に強制的に参加させられてしまった。たっくんはスポーツ推薦で県外の高校に行ったため、たまにしか帰ってこれないが、今日はこのクラス会のためにわざわざ部活を1日休んで来るそうだ。そうするとクラス会の時間帯でしか話す時間がないため、俺もしょうがなく行くことにした。
だが、いざ行くとなると気が重くなってくる。俺はぼっちなのだ。大智と美香は参加するらしいが、ほとんど話さない。小学生頃までは仲良く3人で遊んでいたんだが、中学に入った辺りから相手にされなくなっていき、中学3年の時には、クラスこそ同じだったが、1度も話していない。多分今日も話すことはないだろう。それ以外のクラスメイトなんて、顔も覚えていない。それどころか、多分話したことあるのは係が一緒だった山内さんぐらいだろう。ちなみに山内さんもぼっちだと思われる…。
たっくんは人気者だからずっと俺に構っているわけにはいかない。基本ぼっちの人達はクラス会には参加しないため、俺だけが浮いてしまう。
たっくんと話す時間だけを大事にして、他の時はひっそりとしていよう。
なんだかんだ思ってるうちにクラス会の会場になっているバイキングの店に着いた。すでに今日参加する予定のほとんどの人が集まっており、駐車場で時間が経つのを話しながら待っている。しかし、まだたっくんはいなかった。そのため俺は、少し離れたところで時間までスマホを見ながら待っていた。時間になってもたっくんは来ず、仕方なく他のクラスメイトたちと店に入り、6人席にそれぞれ座っていった。幸い他の客はいなかったため俺は1人で空いてる席に腰をかけ、たっくんにメッセージを送った。
雄太『まだ?俺にたっくん以外友達いないのわかってるよな?』
拓馬『ごめん!でも、あと5分で着くから、それまで1人で頑張って👍』
雄太『いや、何も頑張らないから』
拓馬『これを機に1人ぐらい友達作ればいいじゃん。ゆーたが思ってるほど悪い奴らじゃないぜ!』
雄太『いや、でもさぁ、俺のコミュ力じゃあ…。しかも、知らない人ならまだしも、急に話しかけたりすると、は?なにこいつ?ってなるやん!』
拓馬『いや、あいつらからしたらお前と話すのは初めてだから、初めましてだろ笑』
雄太『おい!笑』
拓馬『そろそろ着くわ』
雄太『了解!』
たっくんと話したことで俺の気は少し楽になっていた。改めてたっくんに救われてきた日々を思い浮かべ、感謝していた。
カランカランッ
お、たっくんご登場!たっくんはみんなに遅れて悪いと言いながら俺の前に座った。一部の女子が不満そうに文句を垂れているのが聞こえたが、俺はそれを無視して久しぶりの親友との再会に喜んでいた。
「また背、伸びたんじゃないか?中学卒業するときは180ぐらいだったよな?」
「あぁ、今は185センチあるぜ!」
流石スポーツ推薦で県外まで行っただけある。そしてしばらく他愛もない話に花を咲かせていると、急に眠気が襲ってきた。あたりを見渡すと他の人たちも同じような状況だった。そこで俺の記憶は途絶えた。
とても心地いい…。この心地よさが有れば何もいらない…。
気づくと浮遊感がありながらも風を感じず、むしろ温もりを感じた。目を開けようとするが、開かない。手足も動かない。あれ?おかしいな…。
動かそうとするが全く動かない。しかし、締め付けられてる感は全くない。……もしかして目も手足も…無い!?1度そう思ったらそうとしか思えなくなってしまった。そして慌てふためき色々と頭の中で考えようとしたが、まとまらず、しばらくして考えることを放棄して、無心状態に入った。
その瞬間、急に寒気がした。
『あなた今、私の"魅了"を解除したわね?気に食わないわ、クソガキが!
ふふっ、精々苦しみなさい。』
頭の中で、鼓膜が破れそうなぐらいの音量で響いた。あまりの音量に気を取られて言われたことが全然頭に入ってこなかったが、叱られた気がした。
しかし、耳がないのに言葉が聞こえるって、変な感じだなぁ。不快感はあったものの、気にしないようにすることにした。
それにしても怒鳴られてから嫌な感じがする。でも、そこまで気にするほどでもないか。
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