潜水艦の壁

 潜水艦の調子がおかしい。数週間前から深海の調査のために乗り込んでいたが、昨日から壁がぬめぬめしてきた。なでると指に粘液がへばりつく。乗船していたダイバーたちが外の様子を見に行ってから帰ってこない。粘液を調べていた同僚が叫んだ。「これは壁じゃない、タコの胃の中だ」私たちはいつの間にかタコに飲み込まれ、その胃の中で飼われていたのだ。潜水艦の壁をじわじわと溶かしながら。外に出ればダイバーたちのように消化されるだろう。壁から粘液がぽたりと垂れて、私の頭の上に落ちた。


Toshiya Kameiさんによる本作品の翻訳がアンソロジー「The DEEP: An anthology of dark microfiction」に掲載されました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る