幕間 終わりの始まり
姜敍は
老母を危険に晒す事を躊躇していた姜敍の態度は、儒教倫理における「孝」の基準で考えれば立派な事ではあったが、その話を家の奥で聞いていた当の母がそれを一喝した。
既に髪は真っ白で杖を突いていたが、その眼光は鋭い。どこか趙家の中心である王異を思わせた。
「何と情けない! 私の存在を理由に忠節を全うできぬとあらば、ここで自害して果てるまでです!」
老母にそこまで豪語されては、姜敍とて従わざるを得ず、その様子を見ていた楊阜も苦笑するのであった。
こうして楊阜が歴城の姜敍を引き入れた頃、
そんな頃、
馬超軍の主力が
しかし
何よりも閻行は、かつては馬超すらも打ち負かし、韓遂軍最強と
この西平の戦いは閻行軍の圧倒的優勢で最初の戦いを終えたのだが、閻行軍が防戦に徹した事で韓遂軍も壊滅までには至らず、金城へと撤退したのである。
これらの報告は当然の事ながら冀城にも届けられた。
これを好機と見た馬超は、隴西を一気に攻め穿ち、韓遂と閻行を諸共に打ち破って金城、西平を手に入れんと意気上がった。
そこで趙昂が進言する。韓遂に背後を突かれない今こそ、まずは隴西西部の
「何故だ。あのような辺境を攻め落として何の意味がある」
そう答えた馬超の疑問は当然である。
そこで趙昂は、手の者が調べ上げたとして、枹罕の老王・
先の兵士反乱に関しては、宋建の手回しだという確証はどこにもなかったが、そこは方便だ。何しろ妻子の命が危険に晒された事件である。馬超を激高させる理由としてこれ以上ない物であった。
馬超からすれば、彼が故郷を追い出された事、一族郎党が処刑された事、更には妻子の命まで狙われた事、その全てがひとりの老人の陰謀であったと言われたのである。その怒りは韓遂に対する物の比ではなかった。
こうして馬超軍の枹罕出兵は、議論をするまでもなく即座に決まる。
多くの者にとって最後の戦いが始まった瞬間であった。
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