君に贈る花とともに

赤坂 葵

ネリネ

 僕は読書が趣味だ。


 読書は僕の乏しい知識を豊かにする。

 それぞれの作品に筆者の心情、性格。そして、価値観が現れる。

 僕が思うに、作品とは筆者の生き方を表すものだろう。

 筆者の生き方を知ることができる。


 今日も僕は、新たに筆者の生き方を知る。自分が筆者になったつもりで、筆者の視点で。


 僕は高く積み上げた本の山に手を出す。その中から一冊、今にぴったりな作品を引っ張り出した。


 今日は満月だ。

 満月の夜は眩しく、とても輝いて見える。


 満月の日に、月明かりの下で本を読む。僕の一番好きなことだ。

 僕は本を持ちながら窓を開き、そこに腰掛ける。

 そして本を開き、月と共に作品の物語に入り込む。


 月が世界を照らしてくれている中、一ページずつゆっくり丁寧に、物語を進行させる。

 まるで楽器を演奏するように。そして、紙の擦れる音を楽しみながら。


 数ページ進めると、突然風の雨が降る。ふわふわと、そして優しく。

 風には色々な香りが混ざっていた。


 秋が去ろうとしているような香り。そして、ネリネの優しい香り。

 僕の鼻を刺激し、更に物語に引き込まれた。


 ネリネの花言葉は「また会う日を楽しみに」だ。


 僕は秋に別れを告げる。ネリネの花たちと共に。

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