第12話 有言実行なるか──!?
さて、ゴブリンの方はというと、やはりなかなか私が攻撃をくらってくれないので、またストレスが溜まってきたようだ。
「クソッ、ネズミのようにちょこまかと……! いい加減、オレ様自慢のこいつをくらいやがれッ!」
本気とも取れる一撃が私を襲う。が、
「それはお断りよ」
私はタイミングよく上へ
巨漢は今まで、身長160センチメートルに満たない私に合わせて下ばかり向いていた。首の角度を戻しもせずにそのまま、あの人間はどこへ行った? とばかりに奴は、構えを解いてキョロキョロ。それがいけなかった。大きな
もしやと思って、ゴブリンは、まだ未確認だった上を見てみた。
「!」
やっと気づいたか。けれど、もう遅いんじゃない!?
そう。私は奴が想定していたよりも高く跳んでいたのだ。
ゴブリンに防御態勢をとる余裕はなかった。不運だったな。そして私はその逆で。
シュバッ!
私はいとも簡単に、魔物の左腕──肘から上の部分を斜めに、少しばかり深く斬りつけた。
うむ、
追撃はしない。私は、顔をひきつらせて傷口を抑えるゴブリンを観察しながら自分に問いかけてみる。
跳んだ位置が悪かったので、目的の部位まで刃は届かなかった。どの位置から跳べばいいのか。また、どれくらい強く力を
ハナは今度はおとなしい。現時点でどちらが優勢かは問うまでもないのかもしれないが、ハナの安心度は100パーセントではないかもしれない。そんなオーラを、彼女の方から感じるのだ。
「
原型がわからなくなるまで、ひたすら殴り続ける気か。それは恐ろしい……。まぁ、そんなことを甘んじて受け入れる者など、国中探してもいないだろう。
「『ハイ、どーぞご自由に』……って言うとでも思った? そんなワケないじゃない。だいたい、女の子殴るなんてサイテーな奴がするコトだし。はぁ……。パワーアップしようが何だろうが、所詮は下等生物かぁ。品がないなぁ」
いわゆる脳筋ってやつだな、こいつは。こうして話をするのも、なんだか飽きてきた。私は1回だけ強めに息を吐き、気持ちを切り替える。
「下等だと? ただのゴブリンにすぎんかった頃はそう言われたこともあったかもしれん。しかしだな! 生まれ変わったオレ様は、もはやそんな存在ではない! それを今ここで証明してくれるわ!」
なんだかこっちもイライラしてきた。もうダラダラやってなどいられない。この戦いを早く終わらせたい私は、ほんの短い時間だが、剣を持つ手に意識を集中させる。
コォォォォ……。
魔力(私だって少しは持っているのだ)が放出され、刃全体を包み込む。これにより、平凡だった武器の殺傷能力は、何もしない時よりも強化された。
私は地面を蹴った。一瞬で間合いを
剣を横に振ったが、ゴブリンの反応の方が
だが、状況はすぐに動いた。身体の一部に違和感が。それは私ではなく──ゴブリンの方。
「なッ……!?」
奴は左脇腹を見ると、信じられないといったような声を出した。通算3つ目となる傷が、そこにあったのだ。
私の剣はかわされたように見えて、実はそうではなかった。剣から生まれる風圧で斬ってみたのだ。成功した。魔力を上乗せすると、やはり違うなぁ。この調子で行ってしまおうか。
「ソラ、ちょっと危ないよ離れて!」
ハナだった。観戦に徹していたはずの魔術士は、こっそりと直径30センチメートルほどの火球を作り上げていたのだ。
私はすぐにそれを認識、そして数歩移動。
「これでもくらえーい!」
ハナは火球を、ゴブリンめがけて放った。人間のトップランナーよりも速いスピードで、それは空中を
ボウンッ!
顔面に、熱いものを浴びた。
今のは初級の術……のはず(私、魔術はあまり詳しくない)。一般的なゴブリンには効果があるだろうが、こいつに限っては──
「……ですよねー」
ハナの弱々しい声。これは、ほとんど無意味だったか。
チャンスだと思って、やったんだよね? うんうん、間違ってはいないよ。魔術に対する防御力もあるとは聞いていたけど、どんなものだか、やってみなくちゃわからなかったわけだし。
「やらなきゃよかった」
結論はこれだったが。
「……今のはお前かぁ?」
ゴブリンとハナの目が合った。
「熱いじゃねえか。あぁ? 火傷したらどうしてくれるんだ」
「あわわわ……どーしよ」
ハナは直立状態で、身体全体を震わせる。
はっ……! これはいけない展開かも!
「ハナに近づかないで!」
ゴブリンは、攻撃の対象を私からハナに替えるつもりだ。これはなんとしても阻止せねば。
私が言ったにも関わらず、敵はゆっくりと前進する。無視するなー!
「だから、近づくなってば!」
ハナは、2発目を
相手は背が異様に高いので、
剣は魔力を
「ぐうッ……」
ゴブリンは
ハナが見守る中、私に大きなチャンスがやってきた。脇がガラ空きだ! そこを逃してはならない。私は剣を両手持ちにし、左足を
ゴブリンは
「う……おぁぁ……」
顔から汗が流れる。目を大きく見開いている。その視線の先にあるのは、乾いた大地のみ。もはやまっすぐ前を向いていられなかった。
そんなゴブリンを、私は利用させてもらった。膝を踏み台にして跳んだのだ。こいつ、胴長短足なのよね。
「ぐぁぁ……。むッ……どこだ、あのガキ……」
私はゴブリンの頭上──奴から見て左
ただ、気合いの声だけは出して──
ズバァァッ!!
光る刃が、ゴブリンの頭と胴体を
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