第4話 引き寄せられた依頼③
僕と梨子は琉花さんに促されるままに席に着いくと、彼女の話に耳を傾ける事にした。
「雨宮、梨子さん。もう知ってると思うんだけど、琉花はオカルトアイドルユニットの『ごーすと・ぷりんせす』略してごすぷりを組んでるわけ。あ、これ新しいアルバムと私のコスプレグラビアね。あげるわ」
「はぁ」
杉本さんが、鞄からCDとコスプレグラビア集を机の上に出してきた。二人分きちんとあるが、これが相談料なのだろうか。
CDはともかく実家にグラビア集は恥しくて置けないんだけどまさか本人目の前にして断る訳にもいかない。
梨子もそれなりに嬉しそうにしているし、僕は気の抜けたような返事をしてしまった。
「琉花ちゃんの隣にいるのは、リーダーの
「天野さん、よくご存知ですね。彼女が最年長で、ごすぷりのリーダーになります。後の
梨子が案外詳しいことに驚きつつ、頼んでいたコーヒーと梨子の注文したチーズケーキ、そして僕が頼んだ苺パフェが運ばれてきた。僕が思うよりも苺パフェは大きかったが、ばぁちゃんは喜々として、背後で目を輝かせている。
「あんた、それ一人で食べる気? 胸焼けしそう……太るの気にしない一般人って羨ましい」
「健くん、苺パフェ好きなの? かわいい」
僕は恥ずかしくなって項垂れた。甘い物は食べられるが、ばぁちゃんが横から苺パフェをねだるので、仕方無く頼んだのだけどまさかそんな事を口に出来るはずも無い。
ばぁちゃんは僕の背後から、苺を掴んで口に含み、見えないスプーンでパフェの魂のようなものをものを食べ始めていた。ずいぶんと豪華なお供え物だ。
「ぼ、僕のことはいいから、それで……曽根さんに何かあったんですか? 僕に頼むという事は、琉花さんでも弾けないほどの霊障なんですか?」
「いろいろあるの。メンバーって言ってもみんなとべったりじゃないし。あいらさんはリーダーだけど、琉花とプライベートまで仲良くないの」
琉花さんの守護霊は陰陽師のようで、おそらく彼女のご先祖か血縁者だろうが、彼女の側にいると周囲の悪霊が弾かれ結果的に無関係な人も守られる事になる。いわゆる『盾』のような役割をしていた。
琉花さんは、霊を視ることは出来るが祓う事はできず、この強い守護霊で身を守っていてそれを逆手に取って霊視と除霊ができるアイドルとして売り出しているわけだ。
僕が烏帽子を被ったこの男性に話しかけてもほとんど反応はしないが、彼が霊力が強いと言う事は僕にでもわかるので、それでも弾けないとなると相当強い霊なのだろうか。
しかし、ユニットと言っても仕事仲間と言うだけでシビアな関係のようだ。
琉花さんはリーダーのことを心配して僕に相談してきているが、どうして本人がこの場にいないのか疑問に思った。
「雨宮さん、最近オカルト界隈である噂が囁かれているのをご存知ですか? とあるWEBサイトにアクセスすると、呪われるっていう噂があるようでして……、ニュースにもなっていた先日自殺配信した都内の会社員女性が、そのサイトにアクセスするという検証動画をあげていたみたいなんです」
「あ、聞いたことあります。流行りだしたのは去年あたりですよね? 確か、チェーンメールみたいにURLが貼られたメッセージが来て、そこにアクセスすると気味の悪いサイトに繋がって発狂するとか、自殺するとか言われてる」
梨子が目を輝かせて身を乗り出した。いつの間にかノートパソコンまで開いて、心霊事件簿ファイルを開いている。
僕は霊感はあっても、なるべく普通の生活を送りたいので、積極的にあちらの世界の情報を調べたり仕入れる事は無く、この噂も初耳だった。
「そんな噂があるんですか? それって何ていうか……都市伝説みたいなものじゃないんですか? それか、悪質な悪戯というかフィッシング詐欺みたいなものでは?」
通常、見知らぬ人から送られてきたメールを開いてURLにアクセスする人はほとんどいないだろう。悪質なフィッシング詐欺や有害なサイトに飛ばされる危険性が高い。
僕はたんなる、オカルト好きな人間が作り出した創作の話だろうと思った。
そのメールは「闇からの囁き」と言う意味深なタイトルで添付されて、見るべきものがある、という意味深なメッセージが書かれているという。
「それが、URLが届いた人がオカルト掲示板か何かに貼り付けたの。怖くて見れないから検証して下さいってね」
「さすが梨子さん! それでオカルトガチ勢の人たちがアクセスしたわけ。そしたら、リンク切れなのか削除されましたよ、て言うエラーメッセージが出たの」
つまり、アクセス出来ず検証もできなかった訳だ。やはり悪質な悪戯のような気がする。
「そして、相談した方が皆の反応を見て試しにアクセスしてみたそうです。ですが、なぜかご本人はアクセス出来てしまって……『見れた』と言う言葉を最後に、その人は二度と掲示板に現れなかったそうです。ここまで聞くと、ただの創作の怪談ですよね」
残念ながら僕も
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