第2話「星に願いを④」

 早速、街に出た俺たちは、オルゴールと言えばということで、メルヘン交差点にあるオルゴール堂へ向かった。

 いろんな色と音のたくさんのオルゴールが、オレンジ色の灯りに照らされて、すごく幻想的だ。


 俺とサワさんは、壊れたオルゴールと似たようなものを探し、やっと同じようなものを見つけることができた。しかし、それをスハラに見せると、スハラからは全く違うものにしてはどうかと提案されてしまった。


「だって、全く同じものはないんだ。だったら、サワがオルガにあげたいものにしたほうがいいんじゃない?」


 お詫びなんでしょと言うスハラに、また考え込んでしまったサワさんは、30秒くらい固まった後、何かを決意したような顔をして頷いた。


 そこからは、サワさんを先頭に、俺たちも店の中を右往左往して、オルガに何を贈るか考えた。

 相当な時間をかけてサワさんが選んだのは、透明なピンク色の、ピアノの形をしたオルゴール。


 曲は定番の「星に願いを」。


「きっとオルガは喜んでくれるよ」


 スハラがそう言うと、サワさんは、真剣な顔のまま頷いた。

 そのあと、サワさんがどうなったかって?

 オルゴールを買った後、サワさんはすぐに帰っていった。

 俺はサワさんが心配で、謝るところまでついていこうかと思ったけれど、スハラに「サワなら大丈夫だから」と止められて、ついていくことはできなかった。


 あれから、一週間が過ぎている。

 サワさんもオルガも見かけてないし、喧嘩したとか何かあったというような噂も入ってこない。

 俺は気になって、テレビを見ながらお茶をすするスハラに問いただしてみた。


「スハラ、サワさんってあの後結局…」


 ピンポーン。


 突然の来客を知らせるチャイム。訪れたのは、俺にとって願ってもないヒトだった。


「2人とも、この間はありがとう」


 オルガは、部屋に入るなり、開口一番、そう切り出した。

 3人で、オルガがお礼にと持ってきた、あまとうのクリームぜんざいを食べながら、俺は気になってたことをここぞとばかりに聞いてみる。


「オルガ、怒らなかったの?」

「怒らないわ。」

「でも、大切にしてたものなんだろ」

「えぇ、だけど怒らないの」


 ふふ、と意味深に微笑むオルガ。俺がハテナを浮かべていると、スハラが解説してくれた。


「あの壊したオルゴール、もともとサワがオルガに贈ったものなんだよ。サワ本人は忘れてたみたいだけど」


 そうなのよ、と微笑むオルガ。

 どういうことだろう。


「だいぶ前に、サワがプレゼントしたんだよね。あれもクリスマスくらいだったっけ?」

「えぇ、そして、それもスハラの提案だったわね」


 ってことは、スハラは事情を分かった上でいろいろ話をしていたのか。

 でも、気になるのは。


「サワさんがプレゼントを考えるなんて、なんかイメージに合わないな」


 俺が思ったことを口にすると、2人はそうだよねと笑い合う。


「もともとは、オルガが悩んでたからなんだよ」


 スハラがオルガに目配せすると、オルガは微笑んだまま「いいよ」といった。


「あのときはさ、」


 スハラが話してくれたのは、オルガとサワさんの昔の話だった。

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