人形劇-monologue-

月光と紅茶

プロローグ「初恋」

――物語は突如として始まる。なんの拍子か物語の歯車が動き出した時、ドラマの幕が上がる。

これはとある少年のそんな始まりのお話――




 僕は両親と玩具屋にきていた。

店内に飾られている玩具たちのそのどれもが輝いて見える。今日は誕生日で、今はプレゼントを選びに来ている。

両親は言う「好きな物を選んでいいよ」。

でも僕はただ一つの物に釘付けになっていた。会計場所、その隣にある大きなガラスケースの中で眼を閉ざす彼女。

僕は呆然と歩み寄り彼女の名を知る。

『アリス・ラピスラズリ』

その下には彼女を紹介する文が小さく数行。


――彼女は運命を待つ人形。

その運命が幸運か不運かはあなた次第。どうか彼女を手にする貴方が幸運でありますように――


「テリー、それがいいの」


母の声がして振り向く。


「ううん。今年のプレゼントはもういいかな。母さんと父さんと、家で楽しく過ごせればもう満足だよ」


そう言ったけれど、外に出るまでそこには僕と彼女しかいない様なそんな夢を見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る