にじ

「凛!!起きなさい!!」

俺の耳に大きな衝撃が来て意識が覚醒した。


「なずな、そんな強く起こさなくてもいいだろ。もっと可愛く『凜君~朝だよ?起きないとキスしちゃうよ?いいの?』みたいな感じで起こしてくれてもいいのに。」


「はあ!?誰がそんなことをするのよ!!アニメの見過ぎ!!大体私はあんたの彼女でもないんだから起こしに来てあげてるだけでも泣いて感謝してほしいわ。」


「そうだな、こんな可愛い幼馴染に起こしに来てもらえているだけでも感謝しないとな。いつまでもこんな朝が続くわけじゃないんだし。」


「ちょ、ちょっとそんなに真面目に考えられると接しにくいんだけど。とにかく!早く準備しなさい学校に遅れるよ!!」


「ああ、分かった。じゃあなずな俺の服取ってくれ。」


「全く、少しは自分でやりなさいよね。そんなんじゃ彼女ができたときにだらしなさ過ぎて振られるかもよ?」


「大丈夫大丈夫!俺に彼女とかできるわけないから!」


「そういう風に逃げないの!全く……。はいっ、じゃあ私はリビングで待ってるから早く着替えて降りてきなさいよ。」


「おう、善処するわ。」


「もう……。」


バタンッ。ドアが閉められて一人になりまたなずなの存在のありがたさについて考えていた。なずなは可愛い。容姿もさることながら彼女のツンとした性格、またそのツンとした性格の中の優しさに惚れる男子も多々居る。そんな人気な彼女が俺を起こしに来てくれているのだ。他の男子からすれば大金を出してでも経験したいことだろう。


「いつもありがとうな、なずな。本当に感謝してるよ。」


長い付き合いで感謝を素直に伝えのは恥ずかしい。なずなには悪いがこれが今の俺にできる限界だ。高校生にもなってこんな事も伝えられない、伝える勇気がない男で申し訳ない。こんなんじゃいつまで経っても告白なんてできるわけない。でも今日の言葉で俺は駆り立てられた。なずなに取ってみたら軽い言葉だったのかもしれないが、俺には積もり積もった感情の均衡が破れた大きな言葉だった。


「なずなはモテるから早くしないと取られてしまうかもしれない。それにこのまま停滞している訳にはいかないよな。いい加減他の男に告白されているなずなの姿を見て心配になるのは嫌だ。」


でももし告白を受けてもらえなかったらと考えると足がすくむ。それに今ある幸せは戻ってこないだろう。だったらこのままでもいいんじゃないだろうか。告白なんてしなくていいんじゃないだろうか。


いつもそうだ。こんな考えが俺の頭を占領する。いつもならここで打ち負けてしまい告白をしなかった。でも今日の俺は違う。もう言う。告白しなければきっと、いづれこの関係は壊れる。何より告白もできずに、なずなが彼氏を作ったら俺は本当に後悔するだろう。よし、いくぞ!!


ガチャッ。

「ちょっと!遅いんだけど!遅れちゃうよ?」


「なずな!!好きだ!!!!!ずっと前から、なずなの事が好きでした。俺と付き合ってください!!」


「え……。」


「あ……。」


告白する!と決めていたからなずなの姿が見えた瞬間に思わず告白してしまった。言ってしまったものはしょうがない。この嫌な沈黙が怖い。ほんの数秒だったのかもしれない、でも俺には数分に感じた。


「え……えっと、わ、私の事が好きなの……?」


グッと握りしめてるこぶしに汗が浮き上がる。


「うん……。」


「そう……。私のどこが好きなの……?」


心臓の鼓動が早まりすぎて動脈を触っていないのにドクンドクンと、脈を感じる。


「なずなの俺にきちんと怒ってくれるところ、ツンとしているところ、たまに見える優しさ、一緒に居て安心するところ、何よりあの時の笑顔が忘れられないです。」


「そ、そうなんだ……。わ、私も凜の事好きだよ。」


その一言を聞いて俺の心臓は心拍数を下げていく。


「本当に……?」


「うん……。凜の抜けているところも、集中したときの真剣な顔も、困っている人を助けられるところも、優しく手を差し伸べてくれるところも、可愛い寝顔も、全部好きです。」


「そ、そっか。」


あぁ、喜びを何かで表現したい。なずなが俺の彼女になってくれる。


「なずな!」


俺は我慢できなくなりなずなを抱きしめた。


「ちょ、ちょっと……少しだけ痛いよ……力入れすぎ。」


「ごめん、ははっ……振られる覚悟をして告白したから嬉しくて。」


「私も。私が必死にアピールしてるのに凜は何もアクションを起こしてくれないし。私が告白されてるのを知っても全然嫌そうな顔しなかったし……。鈍感すぎ!!」


「ごめん、これからは気づけるように頑張るよ。」


「いや、これからも鈍感なままの凜でいいよ。そっちの方が凜って感じがして好きだから……。それに……他の人からの好意とかに気づかれても困るし……///」


「ッ!!」


あぁもう愛おしい気持ちでなずなが痛がっていたことも忘れて体全体で表現するかのように強く抱きしめた。



『ジリリリ!!!』

俺のスマホのアラームが鳴る。


「もうゆっくりできないね、早く準備しなくちゃ。」


しかしなずなは俺の事を抱きしまたまま動かない。


「なずな?」


「あっ……ごめん。」


「ふふっ……これは遅刻確定かな。」


俺はまたなずなを抱きしめた。


俺たちはそれから数分、数十分かもしれない時間抱きしめあった後、学校へと向かうことにした。


「二人で一緒に遅刻とか、噂になっちゃうな。」


「そうね。」


「なずななんか嬉しそうだね。」


「ふふっ……なんでもないわ。」


俺たちは家のドアを開け、道を歩いた。空は昨日と真逆で見事な快晴で、気持ちのいい日が二人の背中と握り合った手を優しく照らした。



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いかがでしたでしょうか。私はカクヨムに作品を投稿してまだ3か月ほどしか経っていません。その活動期間の中で自分の表現力のなさを感じました。そこで今回のように短編で表現力を磨こうと思った次第です。この作品に対して改善点や、ここが良かった等評価、コメントをしていただけると大変助かります。







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にじ @niji_0

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