異世界で魔王を倒して帰ってきたら、現実世界で魔王と恐れられていた

小野音

第1話


 私立緑ヶ丘高校2年2組。このクラスには目立つグループが2つあり、いつもワイワイと仲間内で話している。

 俺、柊木俊介(ひいらぎしゅんすけ)はそのどちらのグルー・・・いやどのグループにも所属できない、いわゆるボッチってやつだ。


 教室のどこかで、高校生活は青春した者勝ちだ、なんてワイワイ陽キャは言う。

 学校祭や運動会、球技大会とか行事があるごとに、どこからか「青春しよーぜ!」とか聞こえてくる。高校生だけでなく、街を歩けば自然と目に入る広告にも『青春」と大きく描かれていている。

 こうやって世間が高校生は青春を過ごすんだとか考えているが、俺は青春の中にいるのだろうか。

 もし、みんなが言う青春が青春を表す文字のように青くて美しい春のような、仲間達でバカをしたり、意味のない会話をして笑ったり、時にはクラス一丸となって盛り上がる、それを青春というのなら俺は青春を送れていないのだろう。

 それこそ青春を謳歌してると言えば周りの男子や女子全員を巻き込んでワイワイとはしゃいでいるあんな人たちのことを言うんだろう。


 森陽葵 (もり ひまり)。

 クラスで目立つグループの中心にいて、常に誰かが隣にいる。

 学年で誰が一番可愛いかと聞いたら半分以上は陽葵の名前で埋まるほどの美貌を持っている。

 おまけにバレー部のエースだと言う。

 たぶんあのグループの中の男子数人は陽葵狙いのゲス豚だろう。

 陽葵の言葉にだけ相槌を打つような奴もいる。

 あいつは絶対陽葵狙いだな。外から見ていてもその魂胆が見え透いていて気持ちが悪い。

 そんな美女の森陽葵は、俺と幼馴染である。幼稚園が同じだったからよく2人で遊んでた。中学3年になってからは一度も話してないが、あんな美女と遊んでたなんて自分が一番信じられない。


 

 その陽葵の隣にいる佐野颯汰(さのそうた)は、一言で言えばイケメンだ。イケメンな上にサッカー部という青春の金字塔的部活に所属している。去年の学祭では浩太ファンクラブの女子たちが写真を撮ってもらおうと行列ができたほどだった。

 

 俺が青春とはなんだとか考えてる間、あの2人は本物の青春を謳歌しているのだろう。

 どうして俺はこうなったんだかとは考えないようにしないとやってられない。


 このクラスには、もう一つ目立つグループがある。

 そのグループはクラスの女子が多く所属していて、そのトップに高瀬梨奈(たかせりな)がいる、

 陽葵たちのグループが皆んなで仲良くやろーぜ、って感じだとすると、高瀬梨奈のグループは高瀬梨奈のためのグループって感じだ。


 高瀬梨奈がカラオケに行くと言えばカラオケに行くし、高瀬梨奈がパフェを食べたいと言えば、パフェを食べに行く。よくそんな光景を見る。


 あそこの所属してる女子たちは何が楽しいんだか見当もつかない。

 せいぜい、クラスでの最低限の地位は約束されることくらいしかメリットはない気がする。

 女子高生からしたらそれがすごく重要なことなのかもしれないが。

 俺には理解できない。


 とかとかクラス事情をなんとなく考えていると昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

 その後授業も終わり、担任の先生が風邪で休んでいるから帰りのショートホームルームもない。

 教室に残る必要もないしさっさと帰って本でも読もうと立ち上がったその時だった。



 なんの前触れもなく――




 ほとばしる白い光が、教室を満たした。




 それはあまりに一瞬の出来事で何もできないまま俺の意識は遠のいて行った。

 




 


 

 




 

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