第20話 準備期間

文化祭が近づくと、その準備に追われる。

普段、話をしない子たちとも、話をする機会も増える。


うちのクラスの大物は、演芸。


なぜなら、「準備が楽だから」とのことだ。


こころは落語をやり、あかりは手品。


「こころは、衣装はどうするの?」

「和服を着るよ」

「目黒のさんま・・・だったよね?」

「落研ではね」


クラスでは、創作をやると言っていた。


「あかりは、どんな手品をやるの?」

「内緒」

「おケチ」


演芸というのに、実際にやるのは、6人。

先に述べた、こころの落語、あかりの手品、そしてクラスの男の子ふたりが漫才をする。

そして、まーくんと私のいっこく堂。

腹話術なんだけど、人形?を二つ使うので、いっこく堂にしておく。


で、肝心の事をまーくんに尋ねた。


「まーくんは、どうしてあの子たちを選んだの?」

「あの子たちって?」

「ラルフくんと、アレックスくん」

「ああ、ライバル関係だよ」

「ライバル?」

どういう事だろう?


「あのふたりは、離れて陳列されていたので、仲が悪いとおもい、仲良くさせようとおもってね」

「そうなんだ・・・」


ぬいぐるみにも、仲の良しあしってあるのか・・・


両親とお兄ちゃんは、絶対に行くと言っていたが、来なくていい。


「ベクちゃんと、モワちゃんを、見に行くんだ」

そういわれた。


家族も、あの子たちが生物であることを知っている。

余計な事を、言わなければいいが・・・


「大丈夫よ」

お母さんが意味深に言う。


まっ、なんとかなるか・・・


「お姉ちゃん」

「何?モワちゃん」

「お兄ちゃんがいない?」


ベクちゃんが、消えた?


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