#06 忘れられねぇ
「とにかくです。山口君、安心して下さい。このあと事件は無事に解決となります。もちろん、これ以上、奈緒子さんに関しての事でヒント料を頂く事もありません」
と言われてしまい、むしろ逆に拍子抜けしてしまう。
僕は、昨日、フーから言われた三つの助言の内、最後の助言に従い、もしもの時の為、ちゃんと準備をしてきた。無論、その準備が無駄になるのは当然の事、それどころか、最後に残ったヒント料の一回分を使わずに事件が解決するとなると……、
もしかして今回の推理ゲームは僕の勝ちで終幕するという事になる。
無論、このいきり立ったサイコパス(一正)を更に追い詰めるとなると、言うまでもないが、僕など毛ほども役に立たない。そんな推理ゲームにおいての勝敗を決するラストチャンスをヒント料無料という大サービスで迎えてしまってもいいのか。
あとが恐い。そう思う。
こいつらの事だからな。
「クレロデンドルム・ブルーウィングとシモツケと言えば、今の状況にピッタリではないのでしょうか。ただ、決めるのはヤマケンさんですから、どう致します?」
とホワイが、また花言葉で言葉を濁してから(隠して)決断を迫る。
ただし、
ヒント料が無料ならば、この機会を生かさない手はない。絶対にな。
「うむっ。無論、答えるまでもないよ」
意図を汲んだフーとホワイが、お互いを見つめてから、微笑み合う。
「てかさ」
と、1人だけ、のけ者にされたハウが頬を膨らませて口を尖らせる。
両手を後ろ頭に回して、チェッと右足で小石を蹴る。
ひゅるりらと雪が一回転したあと舞って静かに散る。
「フム。ハウ。それ以上は弁えて下さい。ちゃんと分かっていますから。ただ、もうゲームは終盤なのです。話をややこしくするのは、また次の機会に。よろしいか?」
「ぶぅぅ。まあ、でも、パパが、そう言うなら、ハウちゃん、ちゃんと我慢するよ」
サングラスを外してからテンプルを持ち、本当は不満なりよ、とくるくると回す。
「……とにかくです。ここは無料でという事で。では続けましょうか」
とフーが言ったの同時に待たされて更にイライラが募ったのか一正が吐き捨てる。
「というかだ。無料とか、なんだとか、なんなんだよ。なんの話をしているんだよ」
チッ!?
「フムッ」
威厳を持った口調で一言、言うフー。
言の葉の圧の気圧されたのか、一正が黙ってしまう。
続ける。
「それは、こちらの話。そんな事よりも一正君、君は、先ほど、お前も死ねば良かったんだよ、あの事故でさ、と言いましたね。それは奈緒子さんの事故の事ですか?」
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