#07 ウソ
「というか、確かに言ったよ。殺すってな。でも、それだけだ。それ以上は何もないんだよ。その証拠に秀也が生きているだろうが。それともアレか……、こいつは」
「うるせぇよ。黙れ。このボンクラが」
と、秀也が一正の鼻頭に強烈な一発をお見舞いする。
人殺しがとばかりにも。
「ククク」
と、全く利かないとでも言いたいのか、鼻血を垂らしながらも不敵にも笑う一正。
「だから利かないんだよ。利くわけがない。ボクは単に殺すと言っただけ。それ以上でも、それ以下でもない。ボクは誰も殺してない。アハハ。殺してないんだよ?」
また秀也の強烈なパンチが一正の右頬にヒットする。
「だからぁ、利かねぇんだよ、バーカ。クククッ!!」
と煽るかのよう更に左頬を差し出して左人差し指の先で軽くつつく。
ククク。
と笑って、嗤い続ける。
うむむ。
思うのだが、ここまでサイコパスぶりを発揮してしまうと、むしろドン引き。犯人は、こいつでしかないと思えてしまう。さっきから、しつこいようだが、もう一回だけ繰り返しておこうか。もはや自分で犯人だと名乗りをあげているも同義だとな。
「というか。ボクのBRZを廃車寸前まで追い込み、ボクを生死の境まで追い込んだのは誰だよ。意識不明の重体にまで追い込んだのは、一体、誰なんだよ、ああ?」
まだ続くのかよ、一正の悪あがきは。
「クッ!」
ただし、
やつの組み立てた論理は正論とも呼べるもので、さしものの秀也も言葉に詰まる。
静かなる降雪は場をさらに冷やして辺りを包み込む。強い風が追い打ちをかける。
「フムッ」
と膠着した場を一刀両断にするフー。
「では、こういうのは、どうでしょう」
なんだ?
「件の車は廃車になっておりませんよね。同じく一正君が生死の境をさ迷ったというのが真っ赤なウソだとしたら。……秀也君を苦しめる為のウソであったなら?」
へっ!?
寝耳に水過ぎて、耳を疑ってしまう。
「ちょっと待て。ウソなもんか。ボクは確かに生死の境をさ迷ったし、BRZだって廃車寸前にまで追い込められたんだよ。なにを根拠にして、そんな事を言うんだ?」
焦り、口調が早くなってしまう一正。
マジか。
マジでウソなのか。今までの流れからすると、そう思えてしまうが、もし、ウソだとするならば一正が頼れる理屈が、また一つ崩れる。そうなると、もはや一正の立場は風前の灯火だ。でも、本当にウソなのか。一体、なにを根拠にしてだ。うむむ。
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