#02 集める

「おお。そうか。そうか。ケンダンマンよ。車が違うのを不思議に思っているようだのう。よかろう。余が、そちの疑問に応えてみせようぞ。まあ、でも、ふふふ」


 まあ、ヒント料、よこせとか言うんだろう。ハウよ。


 やらん。


 残り一回分しかないんだから余計に、やりたくない。


 お前らの思い通りにさせてたまるか。最後の一回分は絶対に残すぞ。


 と決して応える事はなかったが、ホワイが読んでハウに伝えたのだろう、ハウが、さらに満面の笑みになってから、でかいサングラスのブリッジを右人差し指であげてから右口角を不敵にも上げる。そののち左に流した髪を右手で軽く、かき上げる。


「まあ、いっか。すったもんだも面倒くさいからタダで教えてやろう。しゃーない」


 いい。断る。自分でなんとかする。後々の為にもな。


 というかだ。あそこで、いきり立っている秀也に聞けばいいんだろうが。多分な。


 と僕は降りしきる雪を払いのけるのと同時に調子に乗って笑うハウを押しのける。


「あれれ」


 と、よろけるハウを尻目に秀也へ問う。


「秀也くん、……ちょっとだけ良いか?」


「ああ、何だってんだ」


 いきなり僕に話しかけられ、秀也は、いくらかの戸惑いを隠せない。


「君が何かを知っているような気がするんだ。だから聞くんだけど一正くんの車は赤のワポンRだったはず。でも、なんで青いBRZに乗っているんだ。この車は?」


「ああ、その事か。これは俺ッちとの勝負で事故らせたって車だ。暴走りの勝負になり、廃車になったってやつだ。どうやら廃車にはしなかったんだろうぜ」


 それどころか直して隠し持ってたみたいだな。伝家の宝刀としてな。


 ああ、そうか。うむ。


 前に秀也と一正がもめて暴走りの勝負になって廃車になったといっていた車か。秀也が言うように修理をして今まで僕らから隠していたってわけか。つまり、あの三台分あったシャッター付き車庫の一つに入れておき、ここまでとっておいたって事か。


 なるほど。つまり、フーが、わだちを見つけたあの左側の車庫にだ。


 右が一正の親父の車、そして左は空きだと言っていた、あそこにだ。


 妙に納得する。うむ。


「で、店を休んで、あんたらを探して走ってたらBRZ(こいつ)を見つけたってわけよ。廃車になったはずのこいつをな。だから、ヤベぇぞって思ったんだよ」


 隠していた、こいつを出してくるなんて野郎が本気になったんじゃねぇかってな。


 だからこそ俺ッちがここにいるんだが。


 うむむ。そうか。前に廃車になったと思い込んでいたBRZが幽霊のよう現れたから、ここにいるわけか。なんだか、色々、繋がってきた。相変わらず雪は止む事を知らず、むしろ凍え死なそうと考えているかのよう嫌がらせよう更に強くなる。


「ふふふ」


 と、いきなりホワイが笑ってから言う。


 ゆっくりと口を挟む。


「ブラウン・マジェスカも、あなたが運転していたんでしょう? 川村一正さん?」


 まるで雪の精のよう幻惑的な茶色な瞳を細めてから今にも空に舞い上がりそうに。


 ほえっ?


 てかッ!


 いきなりの冷や水をかけられたかのような爆弾発言。


 いやいや、ちょっと待て。待てってッ!


 あの車の運転手が、一正だったなんて信じられない。

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