#05 答えと秘密
いつの間に? 一体、何だろう? と疑問に思う。
少しだけ驚き戸惑う。
ああ。そうか。ホワイのやつだな。
昨日、気を失ったあとにホワイが運転して、ふわふわまで帰ってくれたんだった。
と思い出して合点がいき納得する。
そうなのだ。昨日、秀也に聞き込みに行った際、倒れた僕の代わりにホワイが愛車を回送してくれていたのだ。無論、助手席で死体と化して動かない僕を乗せたままでな。その時にでも挟んだのだろう。昨日、気を失う前まで紙はなかったからな。
いや、うん。確か、なかった気がするけども……。
いや、なかった。なかった。あったら、それこそホラーだからな。
誰が、どこで、ねじ込んだという話にもなるから。
兎に角。
なんだ? と静かに紙を手に取る。
お忙しいところ申し訳ありません。
うむっ。
運転しているだけだから忙しいと言えば忙しいが、それほどでもないが正確だな。
そして、紙の下方へと視線を移す。
なにも書いていない。
続きは裏かと思い、紙を裏返そうとすると視線の端で信号が青に変わるのを見る。
慌てて紙を助手席へと放り投げる。
カサッと乾いた音を立てて紙が表向きに着地する。
綴る言葉という歌詞がスピーカーから流れ、ドキッとしてしまう。
何故だか、何者かが、どこかから僕をジッと見ているような気がしてしまってだ。
クラッチとブレーキから足を離す。アクセルを踏み、発車させる。景色が後方に流れてゆく。また昨日と同じルートで、ふわふわへと向かっていた為、奈緒子の実家の横をすり抜ける。どうやら今日は誰もいないようだ。閑散としている。
スピーカーからは、決して出会うことの出来ない僕ら、という歌詞が流れてくる。
まあ、今日は、……これで正解か。
と考えつつも、先ほどの謎めいた紙に思考を移す。
とにかく、あの紙の送り主がホワイだと仮定する。
ならば、
ややもすると意味がないものなのかもしれない。あの下剤事件や魔女っ子戦隊出動のように馬鹿にして笑うだけのものなのかもしれない。引っかかったとばかり。それでも件のそれらが、一見、意味がないように見せかけて意味があったように……、
意味がないものに見えても必ず意味が隠れている。
灰色探偵が行う、それらには、だ。
では、何が書いてあるというのか?
表には申し訳ないですと書いてあっただけだから、裏に、その答えと秘密がある。
それは、なんなんだ?
走行中で危ないと思いながらも湧き上がった好奇心には勝てず、細心の注意を払って紙を手に取る。前方を注視しつつ視線を紙が在る下方に向ける。しかし、やっぱり危ないと思い直してから信号が赤になるを待つ。右手で謎の紙を握りしめて。
いくらかの信号を通り過ぎたあと。
赤信号が僕の愛車を止めてくれる。
ようやくか。ふおっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます