#11 ザクロ
無論、5万円、きっかりではない。
4人分のカツ丼と、そしてデザートの料金を上乗せした金額を請求されたわけだ。
それが、
口が開いて塞がらなくなった理由。無論、食事代が5万円超えという定食屋では決してあり得ない金額であった事に加えて、今し方、食べたもの以外は、全て出前での予約であった為、本当にいいのですか? と問われてしまい言葉を失った。
今ならば、まだキャンセルできるとさえ言われてしまって固まる。
どうする? 払うのか? と……。
どうやら彼らは複数日を指定して様々なもので5万円分の出前予約をしたらしい。
あのホワイが注文を変更した際に。
目の前で、ホワイの白くも華奢な開いた手のひらが左右に揺れる。
ハッと意識を取り戻して、灰色探偵ダニットの面々を睨み付ける。
キッと。
「フフフ」
僕からの痛いくらいの矢の如し視線を飄々と躱してフーが微笑む。
フムッ!
「もし、追加のヒントがいらないのであれば予約分はキャンセルして下さい。逆に、もし続きのヒントが欲しいのならば予約で出前分である5万円を支払って下さいね」
なるほどな、そういう流れなのか。
だから、支払いを済ませないとならない理由があるって事なのか。
この味ならばの意味も分かったぞ。
クソッ。
またやられた。やられちまったよ。
ハハハ。
僕は右手で目を覆って、天を仰ぐ。
始まりは、昼食を奢って良い気分にさせヒント料を支払わず、ヒントを得るなんて厭らしい計算からだった。それを上書きされ、その上、哀しみを背負わされせた。それどころか上書きされた計算にはヒント料の請求まで組み込まれていたわけだ。
もう笑うしかない。いや、勝手に笑いがこみ上げてきて、勝てないなって悟った。
こいつら、どこまでも性悪すぎる。
と……。
だから、
僕は、5万円を定食屋に支払ってヒントを受け取る事を選択した。
「完敗です。もう計算勝負なんて挑まないですよ」
「フム。よろしい。そうして頂けるとありがたい」
とフーが、温かく柔和に微笑んだ。
「アハハ。ケンダマンには、計算は、まだまだ早かったみたいだね。10年後くらいに出直してきなよ。そしたら、ある程度は速い計算が組めて良い勝負になるかもね」
とハウ。
続いて、
「ふふふ。オダマキはもう古いですね。そうですわ。ザクロなんてどうでしょうか」
とホワイはハウに目配せして言う。
まあ、ザクロの意味は全然分からないけども、オダマキと大差がないんだろうな。
兎に角、
これで灰色探偵に支払った合計金額は55万円。
ヒントは残り回数にして5回。無論、足が出たらと考えると憂鬱にもなる。それでも、今一度、意識を高め直して、なんとしても限られた予算内で推理ゲームを終えると心を改める。フーとしても僕が意識を締め直すのを望んでいたのであろうから。
その心意気にしかっと応えるよう、
フーは、
また意地が悪くは思えない意地悪な笑顔を浮かべて僕を見つめた。
フムッ!
と……。
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