#05 掃く

「ケンダマン、やーい、騙された。アハハ」


 とハウが大口を開け一際大きく笑い出す。


 ハアッ?


 騙されただと……?


「フム。まあ、ホワイからの進言ですから、今回は、わたくしも悪ノリに付き合いました。が、以後は控えて下さいね。どうにも推理ゲームが一向に先に進まない」


 ほえっ?


「そうですわ。確かに、これも必要な事なのですが、あまりに横道に逸れすぎでなのす。今朝のトイレはどこだ? 事件と言い、無駄なアクションが多すぎますわ」


 そういえば、今朝、フーから下剤入りモーニングを振る舞われたな。


 あれにも騙された。


 でもホワイの指示だと言っていたし、しかも必要な事だとも言っていた気がする。


 これもアレと一緒?


 そんな新たな疑問を持った僕に対して応えているのか、ホワイが、二の句を繋ぐ。


「間違いなく必要なファクトなのですが、ハウ、あなたの立てる企画は、どうにも無駄が多すぎるのです。もっと、こう、洗練された簡潔な企画を立てなさい」


「まあまあ、今は、そんな事、どうでもいいじゃん、姉貴。それよりも、さっさと集めようよ。その為の箒なんだからさ。多分、路肩から道ばたにかけてだと思うよ」


 ハウがサッと箒を立てて路肩へと向かう。


 そして路肩から道ばたにかけ掃き始める。


 それを合図にしてかフーやホワイも一緒になって路傍を掃き始める。


 ふむむ。


 魔女っ子大作戦は単なる悪戯だったのか。


 騙されたという悔しい気持ちは確かにある。でも、それ以上に疑問の方が大きい。


 一体、なにを掃くんだ。なにを掃いて集めるんだ。しかも奈緒子が死んだ場所から500mも戻ってだ。ざっとだが、路肩や道ばたに在るものを目視してみる。コンビニ弁当の殻、吸い殻、パチンコ玉、雑誌……、てか、意外と荒れてるな、ここ。


 ゴミだらけで、いくらか気分が悪くなる。


 まあ、でも、ここは隣の市に抜ける国道で当然ながらトラックなどの車の往来が激しい。だからゴミにまみれていても、なんら不思議はない。ただモラルとしてゴミは持ち帰り、ゴミ箱へだ。……なんて僕なんかが言っても説得力はないけどな。


 というか、ハウ、お前、奉仕活動にでも目覚めたのか……、いや、それはないな。


 汚しはしないだろうけども綺麗にしたいという殊勝な気持ちはない。


 やつらに限ってな。


 などと一人芝居を続けながら、嫌々ながらも清掃活動に勤しんでいると、またハウが箒の柄にまたがってフーやホワイの前をうろうろしているのが見える。どうやら重点的に掃いて欲しい箇所を指示しているようだ。一体、なにを集めているんだよ。


 僕だけのけ者にされた気分で、のろのろと無為に路肩を掃き続ける。


 と、やおらハウが近づいてきてから言う。


「ケンダマン、ヒントの続きが欲しいんでしょ。だったらサボってないで掃く掃く」

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