#04 魔女っ子軍団

「目指すは場外ホームラン。目標飛距離500mなりよ」


 とハウが宣言する。


 堂々と。


 てか、知ってるか?


 プロ野球での最長飛距離は2005年のセパ交流戦で、西武のアレックス・カブレラが放った推定180メートル弾が最高なんだぞ。メジャーでも177mが最長だ。ちなみに最短飛距離ホームランは22mだ。まあ、ランニングホームランだがな。


 てかな。500mなんて距離、どう考えても無理だぞ。


 って、違うッ。うっかり乗ってしまった。


 というか、そのバッティングフォームには、どんな意味があるんだ?


「おほほ」


 と、突然にもホワイが平仮名で笑い出す。


 なんだよ。こっちはいきなり笑い出すし。


 心臓に悪すぎだぞ。


 てか、また心を読まれたんだろう。言われなくても分かるのが嫌だ。


「ハウ。悪戯は、その辺にしておきなさい。ヤマケンさんが混乱してしていますわ」


 綺麗に整った顔立ちで厭らしくも笑うホワイが怖くて身震いがする。


 対して、


 いまだに悪戯っ子ぽく白い歯を魅せて、にかっと笑うハウも嫌だが。


「アハハ。めんごめんご。でも飛距離の話は本当だよ。まあ、でも正確には飛距離じゃなくて走行距離だわさ。ささ、目標地点は500m手前だよ。じゃ、行こっか」


 ハアッ?


 ……走行距離だと?


 と、また疑問に思ったが、そんな僕を放っておいて何事もなかったようにフーたちは歩き始める。何の説明もなく。完全に色んな意味で置いてけぼりだ。まあ、でも、そこは自分で考えろって事なんだろう。そう納得した僕は仕方なく後を追う。


「ここッスよ。ここ」


 と先に宣言した通りに500mほど戻った所でハウが立ち止まり、振り向き言う。


「じゃ、これ持って」


 と、素早く手に持った竹箒を渡してくる。


 うむむ。


 箒を渡されたところで一体、どうしろと?


 それからヴィアッド500へと戻ったハウは100均で買ったものだろうか、安っぽいプラスチック製の箒を3本持ってくる。フーとホワイにも手渡す。2人は意味が分かっているのか、黙って受け取る。てか、だから箒がどうしたって言うんだよ?


「じゃ、始めよっか」


 なにを?


 ハウが面白そうに笑って、箒の柄にまたがり、軽く柄を左右に振る。


「魔女っ子、ハウちゃん、いざ出動なりよ」


 と言いだし、またカラカラと笑い転げる。


 同時にフーは苦笑いで箒の柄にまたがる。


「やれやれ、ですね」


 ゆっくりとした上で、のろのろとしてだ。


 続いてホワイもやれやれと箒の柄に……。


「……不本意ですわ」


 だから。だから。みんなで魔女っ子戦隊出動なんて言い出すんじゃないだろうな。


 てかさ。


 その柄にまたがるの僕にもやれって言うのか。というか、やったところで、なにが分かるんだ。いや、どこら辺がヒントなんだ。奈緒子が殺された時に使われたトリックに関係あるのか。何が何だか、さっぱりだ。でも僕には手がない。仕方がない。


 と渋々でも、柄にまたがろうとした矢先、

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