#09 真逆な正論
「わたくし達は、いつも、わたくし達が間違っている可能性である0.68%を探しているのです。わたくし達はわたくし達の推理が違(たが)った所を見てみたい」
へへっ?
「わたくし達の推理力でも及ばないような難事件を体験してみたいと」
あへっ!
「常々、そう思って解決依頼を請け負っているわけです」
おいッ!
待て、待て。あり得ん。
あそこから不遜とか傲慢とかが、綺麗なクラッチングスタートで逃げ出してるぞ。
裸足で。
もはや、推理に自信があるだとか、どんな事件でも解決して魅せるだとかは陳腐。
どんな事件でも解決するのは当たり前で、その当たり前が当たり前でなくなる瞬間が見てみたいだと。例えるならば、地球上で空気を吸っている人類が宇宙に出て初めて空気が吸えなくなった時、ああ、とてもいい経験をしたと、のたまう感じか?
つまり、
こいつらの言い分では、どんな事件だろうとも解決など空気を吸うようにできる。
その空気がない真空と言えるだろう事件に出会いたい。
と、言っているわけだ。
不遜と傲慢が逃げ出しすぎて、大空できらめく星になってしまった。
まだサンドイッチを食していた為、咀嚼したブツを吹き出してしまいそうになる。
というか、もはや、吐き出す言葉さえも選べず、絶句するしかない。
「まあ、だから事件を選り好みしてしまわないよう、事件の難易度を知る前に依頼料を払って頂き、どんな事件だろうとも強制的に事件解決を請け負うわけです」
まあ、正論だけども普通は逆だろうが。
どんな難事件でも解決する自信があるからこそ難易度を聞かないのが通常。しかし、こいつらは簡単な事件の解決を請け負うのが嫌だからこそ、簡単な事件だったとしても嫌々でも解決する状況を作るのだと言っている。異常過ぎる。異常過ぎるぞ。
ある意味でサイコパスだとすら言えないか、こいつら。
そう思うと、先ほど食べたサンドイッチも、3杯も飲んだ珈琲すら怪しく思える。
なんとなく身震いがして、背筋に冷たいものが走った。
やっぱりふわふわの常連の話は、のしをつけて丁重にお返ししよう。
「まあ、下らない主張が長くなってしまいましたが、あまりお気にせず、流して下さいませ。さて、では依頼料の方を払って頂きましょうか。お話は、そのあとです」
フーの瞳が細くなった。
ダニットの様々なる情報が得られた今、その笑顔が、余計に怖くなってしまった。
人が悪い探偵、ダニットか。……うん。どこにも間違いは、ないな。
過大な広告でもないぞ。
ぞぞっ。
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