本当の幸せ
勝利だギューちゃん
第1話
私は、好きな男の子と同棲していた。
彼は、イラストレーターの卵。
いえ、デビューはしているから、ヒナか・・・
ここでは、Aくんとしておく。
いつか、Aくんが大空へはばたく日を楽しみに、彼を支えた。
Aくんもいつも、私に感謝してくれた。
オンボロアパートでの、暮らしだった。
でも私は、とても幸せだった。
でも、女というのは魔性だ。
私は、他に好きな男の人が出来たのだ。
その彼は、とてもイケメンでお金持ち。
体の相性も抜群だった。
(まあ、今同棲している彼とは、営みはないけど・・・)
ここでは、Bくんとしておく。
さえないヒナのAくんより、Bくんの方がいい。
友達もみんな、賛同してくれた。
私は、Aくんに別れを告げた。
「いいよ。ごめんね。僕に魅力がなくて。新しい彼と幸せにね」
Aくんは、満面の笑みで私を送り出してくれた。
「えっ、本当にいいの?」
「君が幸せになれるのなら、僕は喜んで身を引くよ」
そういって、送り出してくれた。
反論も何もなかった。
Aくんの私への想いはその程度だったのか・・・
逆に寂しくもあった。
でも、これで私を縛るものはない。
私は、Bくんのところへと行った。
Bくんのプロポーズを二つ返事で受けた。
結婚して、子供ができて、幸せな家庭を築く。
とんとん拍子だった。
Bくんは、実業家になり、豪邸を立ててくれた。
そして、たくさんのメイドさんや、家政婦さんを雇った。
私は、自分では何もしなくてよくなった。
Bくんは、浮気することなく、私だけを愛してくれた。
私も、Bくんだけを、愛した。
そして、いつしかAくんの事は、思い出す事さえなかった。
その後の話を聞かないので、結局は大成しなかったのか・・・
私は、Aくんを捨て、Bくんを選んでよかったと思った。
そう・・・
その時は・・・
そして、歳を重ねた。
今では孫もでき、Bくんとは仲睦まじく暮らしている。
でも、私はそれでよかったの?
確かに、何不自由ない生活を送ってきた。
でも、何も残さなかった。
ただ、生きているだけ。
そんな存在だ。
今にして思えば、お金はなかったけど、Aくんと助け合って生きてきた。
あの頃のほうが、幸せだった気がする。
「自分は生きている」
そんな充実感があった。
もし、戻れるならあの瞬間に戻って。やり直したい。
Aくんを支えたい。
そう思うようになっていた。
それで、一生貧しくても構わない。
贅沢かもしれない。
人生には、いくつもの選択肢があるが、私は間違えたかもしれないな・・・
〈その願い叶えてあげよう〉
僕は、イラストレーター。
イラストレーターの卵。
いや、デビューはしたが、ヒナだろう。
でも、さっぱり売れない。
たまに、気の向いた人が買ってくれる。
その額100万円。
合計で・・・
でも、僕には愛する彼女がいた。
一緒に生活をして、僕を支えてくれた。
苦労はかけていると思う。
でも、彼女が管理してくれているので、食生活の心配はなかった。
彼女もバイトをしてくれていて、ありがたかった。
でも・・・
彼女は去った。
他に好きな人が出来たらしい。
その好きな人の話を聞くと、僕よりも幸せになれる。
なので、彼女の幸せのため・・・
僕は笑顔で見送った。
それから、一週間ほどたった。
彼女がいなくなってから、食生活がおろそかになった。
部屋もゴミ屋敷となる。
「これから、どうしよう?」
その時だった。
玄関のドアが開いた。
「ただいま。Aくん」
「あれ・・・どうしたの?忘れ物?」
「うん。大事なもの・・・」
「えっ・・・」
彼女は僕に抱き着いてきた。
「男っていうのは、ほっておくと、こんなものばかり食べて」
憎まれ口をたたいてくる。
「新しい彼はいいの?」
僕の問いに、彼女は答える。
「私の忘れ物は、あなたよ、Aくん。死ぬまで支えるからね」
本当の幸せ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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