悪役令嬢24(TWENTY FOUR) ~前世の記憶を取り戻したけど、死亡エンドまであと24分とかもう遅い!~

靖之

第1話

 私は霧乃きりの しずく


 名前の中に雨冠が二つもある、雨ばっかり降っているような名前。

 雨女になるっきゃない!目指せ大ヒット!

 ……大ヒットは晴れ女か。


 せめて名前を「しずく」ってひらがなにしてくれれば少しはかわいかったのにと思ったりすることもあるけど、それなりに気に入っています。おおきに。


 私は霧乃 雫。


 大事なことだから二回言った。


 どこにでもいる普通の女子高生。

 容姿そこそこ、勉強そこそこ、運動そこそこ、家庭環境そこそこ、面白おもろさそこそこ

 お笑いやアイドルよりはゲームが好きだけど、それに打ち込んでいるってほどではないし、オタクなんて遥か彼方の領域です。


「名前の中に雨冠が二つも入っているけど、雫ってけっこう晴れ女やんな」と言われてしまうのが、唯一の意外性な部分。

 どこにでもいる、大勢の中にいたら簡単にその中に埋没してしまうザ・平民、それが霧乃 雫。


 でも今は、カミーラ・マルコリーニだ。


 なんのこっちゃと思われるかもしれないけど、私自身もなんのこっちゃと思ってる。

 唐突にそうなっていたのだ。

 気が付いたのだ。


 私はカミーラ・マルコリーニ伯爵令嬢で、なんとなんとレーデラック帝国の皇太子ビクトール第一皇子の婚約者でもある。

 その肩書にふさわしいだけのとびきりの容姿を持ち、勉学に優れ、武術では同年代男子にも後れを取らず、帝国内で一番の権力と財力を持つマルコリーニ伯爵家の産まれ。


 優良キャラによくある設定だと言えなくもないけど、実際に自分がなったら「設定盛り過ぎっ!」って叫びたくなる。


 面白おもろさに欠けるところがたまに傷。

 でも傷は一つだけではない。

 それよりも大きな大きな、本当ほんまに大きな傷が一つあることを私は知っている。


 それを今明かそう!


 カミーラ・マルコリーニ、イコール、悪役令嬢、なのだ。


『悪役令嬢ってなんですの!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る