召喚初日が過ぎていった


二人はこの外で喚きながら扉を破壊しようとしていたらしい。

コワッ⁉︎

マジでコワッ‼︎


「なんで? 理由は?」

「それは今から調査する」

「キュリオの話ではこの城には地下牢があるらしい。アイツらはそこに突っ込んだ」


地下にある牢獄だから地下牢……というのは間違いだった。


「凄えぞ。この世界の地下牢は地下にある穴蔵なんだぜ」

「入り口から入ると左に天井から床まで柵がはめられてて、柵の向こうは真っ暗なんだ」


地下牢は魔法も魔導具も効かない。

そのため、柵の向こう側は真っ暗闇で奥が見えなかったらしい。


「二人を中に放り込んで地下牢の扉を閉めたんだけどな。よくよく考えると光のない真っ暗闇なんだぜ。すっげー怖えって」

「食事は? 近くに厨房があるんでしょ?」

「いや。キュリオの話だと、あの中は食事は必要がないらしい。『そう出来ている』んだとさ」


それで納得できるのも洗脳の影響だろうか?


「まあ、あの中にいれば少しは反省するかもな」

「逆に恨みをもちそうだよね」

「今度の矛先はレモンか王子か?」

「地下牢に入れるって提案したキュリオかもよ」

「自分たちを見捨てた&龍アンドリューとレベッカもありえるな」


聞いてるだけも次々と名前があがってていく。


「─── 敵が増えていく」

「というより……すでに離宮で騒ぎを起こしたんだ」


どうやら自分たちの離宮が小さいと文句を言って&龍アンドリューとレベッカを追い出したそうだ。


「真っ先に外観がかわいいって取ったんじゃないの?」

「そうそう。それが思ったより室内が狭いって騒いだんだ」

「たしか、キュリオが『そこはやめたほうがいい』って言っても騒いでいたよね?」

「だって、あそこは簡易宿泊施設を併設したガゼボなんだって」

「ガゼボってなんだ?」

「『見晴らしの良い四阿あずまや』じゃなかった?」

「アイリスさん、詳しいね」

「ただのラノベで得た知識」


そういったら「あー、わかる」と凛々に言われた。

凛々もラノベを愛読しているらしい。

でもガゼボを知らなかったそうだ。


「私は意味がわからなかったら調べるから」

「へえ、賢いねー」

「お前はその知識をどうした」

「読むだけなら知識はいらないもん」


開きなおる凛々に苦笑が漏れた。


「それがアイリスとの知能の差だろ」

「ちょっとー! 私だって知能はあるよ、知識はないけど!」

「堂々と開きなおるな!」


和やかな雰囲気に気持ちが落ち着いてきた。

凛々はバカではない……天然だけど。

それでも今回はいい方向に振り回されている。


「今日はさ、もう休もう」

「そうだね。アイリス、本を読みに来るのは明後日からにするね〜」

「その頃にはあの二人の取り調べが終わってるだろ」

「身体にロープを括りつけて黒い霧の中を歩かせよう。凛々と一緒に」

「ちょっとー!」

「うるさくて魔物が逃げる」

「「「それはいいじゃないか‼︎」」」

「いーやーだー!」


こうして、召喚初日が過ぎていった。

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