絶対にソロを吹きたくない鷹峯部長 前編
※本話は、
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私の名前は
担当楽器はファゴット、と言っても知ってる人は少ないかも知れない。ちょっと悲しい。
それから一応、部長などという、たいそうな役職をさせてもらっている。
GWに行われた校外でのミニ演奏会も無事終了し、我が私立東松山熟田津南高校、略して東校吹奏楽部は、いよいよ夏に行われる全日本吹奏楽コンクールに向けた準備に取り掛かろうとしていた。
その第一弾として、今日はこれからパートリーダー会議が行われることになっている。
本日の議題は、来たるべきコンクールで演奏する自由曲について。どんな曲を演奏したいか、意見を出し合うのだ。
もちろん、最終的に曲を決めるのは顧問の先生だ。しかし、今年から新しく顧問になった
私は今、音楽準備室のイスに着席し、他の部員たちの到着を待っているのだが……
ウチのパートリーダーたちは、マイペースな人が多いため、こういう会議が時間通りに始まることはほとんどない。
いつものことだと自分に言い聞かせ、なるべくイライラしないよう、自分に言い聞かす。
ちなみに、今年のパートリーダーは全員女性である。
♢♢♢♢♢♢
やっと参加者が全員
「では会議を始めよう」
そう口を開いたのは、トランペット(金管楽器)パートリーダー
「おいおい、
ツッコミが入った。
司会は部長である私がやることになってるんだよね……
そう、
ツッコミを入れたのは、低音パートリーダー
「まったく
力強く発言し、これまた司会を務めようとする
「なんで
発言まで男前の
「あっ、しまった……」
おわかりの通り、
「コントはそれぐらいでいいかしら? それじゃあ、今日の議題についてなんだけど——」
二人の天然をサラリとかわす私。この二人にいちいち反応していると、会議が進まないのよね。
さて、気を取り直して、私はパートリーダーたちに意見を求めた。
早速、
「みんなが活躍出来る曲がいいな」
と、発言する。
「じゃあ、『ハラグローネの醜演』なんてどうかしら。あの曲なら各楽器に難易度の差があまりないと思うけど」
こう言ったのは、フルート(木管楽器)パートリーダー兼副部長の
「ちょっと…… その曲って楽器のバランスはいいかも知れないけど、確かフルートのソロパートがあったわよね? アンタ、単に自分がソロを吹きたいだけじゃないの?」
文句をつけたのは、トロンボーン(金管楽器)パートリーダー。
そう、クロエはカワイイ顔して、実は腹黒いのだ。
更にトロンボーンパートリーダーの発言は続き——
「ウチの部で一番実力があるのは
「ちょっと! それじゃあまるで、クロエが実力で劣ってるみたいじゃない」
反論するのはクラリネット(木管楽器)パートリーダー。
ああ、またいつものパターンよ。なんとなく金管楽器のパートリーダー達はトランペットの
「喧嘩はやめよう! 今日はそういう集まりじゃないだろ?」
双方の言い争いを止める
あーあ。ホント、毎回メンドくさいのよ、このやり取り。
だいたい私には、どうしてソロパートを吹きたいのかわからないのよね。
責任重大でしょ? 失敗したら目立つことこの上ないじゃない?
私は絶対にお断りだわ。ソロパートを吹くなんて、考えただけで胃が痛くなりそうよ。
「誰がソロとか、そういうの、ボクは興味ないな。そういうことで喧嘩になるんなら、いっそのこと、オーボエのソロが目立つ曲にしたらどうだい?」
「相田に吹かせるのか。いいんじゃないか」
と、
今年入部した我が部唯一のオーボエ奏者にして、自分がバカなことに誇りを持つ面倒な性格の持ち主相田夏子は、なぜかこの天然2人に可愛がられている。そのため人は彼女のことをこう呼ぶ。『天然に愛されしおバカ』と。
おバカと天然は相性がいいのだろうか?
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