バイトに行くのだりーと思って玄関出たら、異世界ってやつでしたわ。たははっ
西東友一
プロローグ
17時58分
「・・・そろそろ行くか」
やっていたスマホのゲームを止めて、バイトに行く準備を始める。
バイトの開始時刻は18時ジャストだ。
「今日もいっちょ、怒られますか」
俺は机に置いてあったスマホ、財布などをショルダーバックに詰め込んで、最後に自転車のカギを手に持って玄関に向かう。
30分くらい前からゲームを止めないといけないなーっと思っていたけど、ダラダラしていたら、信号のタイミングさえ合えば到着が間に合うはずの17時50分を過ぎてしまった。※着替えの時間は自分的にはセーフ。
別に面白いゲームをしていた訳でも、イベントやクエストがあったわけでなく、ただただゲームをしてしまった。
「あ~ぁ、通勤時間もバイト代出してくんないかな」
近場で選んだバイト先に行くのすらめんどくさい。
「生きるのも辛いなー」
とりあえず、言ってみただけの言葉。この頃異世界転生が流行っているらしいが、別に死ぬのは痛そうだし、そもそもそっち系の話は興味がない。
靴ひもを縛り直して、トントンしてジャストフィットを狙うけれど、どうもしっくりこない。もう一度ほどいて、縛り直す。
時間がない時ほど、こういうのをちゃんとしたくなるよね。
テジタルの腕時計を見る。
17時59分45、46、47・・・
「あ~ぁ、バイトだるいなぁ。せめて、玄関がバイト先につながってればいいのに」
ガチャッ
「はっ?」
「ん?」
玄関を開くと、着替えているおっさんがいた。
金髪にムキムキな身体。
つぶらな青い瞳やアゴヒゲとチョビヒゲはかわいらしいのに、身体は胸毛から何までモジャモジャだった。
「ファファファの、ファーーーッ。ちょっちょ・・・ちょ、待てよっ!!」
声はダンディな感じではなく、見た目より高めの声。
聞き取りやすい、よく通る声だと思った。
「あっ、うぃっす」
とりあえず何を待てばいいかわからないが、返事だけしといた。
「いやだからっ、そんなジトーって死んだ魚の目のような目で、僕の身体観察しないでくれるうっ!?」
胸を腕で押さえ、イチモツを脱ぎたてのパンツで隠しながらおっさんが叫んでいるので、仕方なく横を向く。
「いや、視界に入っているよねっ!?それっ!!」
「いや、入ってないっす。入っていても、脳内の加工アプリが修正済みっす」
「アプリ・・・っ?どうでもいいから、後ろ向いてええええええっ」
おっさんが指で俺を差す。
パンツを持っていたはずの手で。
「あっ」
パンツは一度、そのふくらみの傾斜によってふんばって留まりそうだったが、そのイチモツを隠すのをやめて、するっと地面に落ちる。
「らめええええええええっ」
こんなおっさんが、俺の将来の人生のパートナー(?)になるとは、この時は思いもしなかった―――
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